2007年3月 4日

「冬の蝉」読了

冬の蝉

杉本苑子「冬の蝉」読了。
研ぎ澄まされた、丁寧な丁寧なコトバ。珠玉と呼ぶにふさわしい…。
特に「ゆずり葉の井戸」「冬の蝉」は素晴らしかったです。

杉本さんは、時代小説の第一人者で、
「基本はあくまでも史実に忠実」なのだそうです。
なのにちっとも堅苦しい所がなくて、しなやかにするすると入ってきます。
けれど、このよさを伝えようと、あらすじを言おうものなら、
ちょっとした言葉使いや、身分・風俗にいたるまで、
そのディティールを再現することがとっても難しいです。

まだ現役の作家さんという点もウレシイです。
他の本も読んでみたいと思いました。

投稿者 YOUCHAN : 20:26 | コメント (0)

2007年2月17日

小栗虫太郎再挑戦

寝る前に読む本のきりがよかったので、
時代小説モノをちょっとお休みして、つん読状態になってる本から
チョイスしたのが、小栗虫太郎です。
高校生のとき、「完全犯罪」を10ページで挫折し、
その後、なんどとなく挑戦するも、ことごとく挫折してきた
魅惑の1冊です。
が、日本三大奇書のうち、「ドグラ・マグラ」を
読んだ身としては、やはり「黒死館」と「虚無への供物」は
いつかは制覇せねばなるまい!と常々思っており、
今がそのときかも、と思い切って(?)小栗虫太郎再挑戦です。

そして、昨夜から読み始めているのですが、
内容が頭に入ってくるので、今度は挫折せずに済みそうです。
「完全犯罪」おもしろい。読書は、日々のささやかな楽しみです。

日本探偵小説全集〈6〉小栗虫太郎集
小栗 虫太郎
448840006X

また画像がないなぁ…Amazonさんったら。

投稿者 YOUCHAN : 01:57 | コメント (0)

2007年2月13日

最近の読書記録

長らく読んだ本のことを書いていませんでした。
最近は、人形佐七がお気に入りです。時代ものっていいですねぇ。
あのイキでいなせな気持ちの良い江戸気質、
読んでいてなんとも朗らかな気持ちになります。
あまり時代考証をしてないというのには驚きますが…。
横文字も時々出てくるしねぇ~。

幽霊山伏
横溝 正史
4882932415

春陽文庫未収録レアトラックス、ということのようですが
肝心の春陽文庫版に結構な売り切れがでてるので
どっちがレアなんだかわかりません。
それにしても、この表紙の人形佐七親分の男っぷりは
イメージにぴったりです。
短編ばかりなので、お休み前に一話ずつ読むのもオツな感じ。

江戸名所図絵
横溝 正史
4882932423

「幽霊山伏」には出てこなかった瓢庵先生がいい味を出してます。
面白かったです。お色気も結構炸裂してます。

たったひとつの冴えたやりかた
ジェイムズ,ジュニア ティプトリー 浅倉 久志
4150107394

画像がないですが、表紙と挿絵が苦手だったなぁ…。
面白いんだけど、イメージの妨げになりました。
SFの場合は、和田誠さんみたいなからっとしたタッチの絵のほうが
邪魔にならなくていいかも、と思いました。

世界の中心で愛を叫んだけもの
ハーラン・エリスン 浅倉 久志 伊藤 典夫
4150103305

表題作はすごく好きですが、全編を通して
とにかくバイオレンスで、読んだ後、どーんと重い気分に…。
複数作家のアンソロジー集に表題作が入ってたら
ものすごくいいのに~と思いました。

呪いの塔
横溝 正史
4198925194

もうね、丸ごと江戸川乱歩だなぁと思った。
横溝作品を読んでいるのか、乱歩の小説を読んでいるのか…という気になりました。
乱歩好きの人にも捧げたい。いや、逆に嫌がるかなぁ。

沖で待つ
絲山 秋子
4163248501

最近の作家さんです。
夫婦愛とか、友情とか、そういうテーマなんですが、
新鮮な切り口だと思いました。
太っちゃん、あんたサイコーだよ。悲しいけどさ。

短篇集 バレンタイン
柴田 元幸
4403210902

この人のことをまったく知らないで読んだのですが、
好きなタイプの文章だなぁとおもいました。
内田百間の平成版のような?
「東京日記」みたいな趣があるように感じました。
なんつーか、不思議なことを淡々と語れる
手腕を持った作家さんが好きなんだなぁ~、と思いました。

投稿者 YOUCHAN : 00:04 | コメント (0)

2006年11月10日

「樽」と「探偵小説四十年」

まずは電車の友「樽」読了。


F.W. クロフツ Freeman Wills Crofts 加賀山 卓朗
4150736049

「樽」、デビュー作とは思えないクオリティでした。
大変面白かったです。
新装版の翻訳を手がけた加賀山さんも、すばらしいと思います。

この物語には、主人公らしい主人公はいるようで、いません。
強いてあげれば、樽を取り巻く人々や状況そのものが主人公で、
その移りかわりは映像的だとさえ思いました。
クロフツは映像化に縁がない作家らしいのですが、
「樽」こそは映画向きの作品だと思います。


そして就寝前の友「探偵小説四十年」上下巻読了。厚かった、これは!

探偵小説四十年〈上〉―江戸川乱歩全集〈第28巻〉
江戸川 乱歩
433474009X

探偵小説四十年上巻は、戦前の探偵小説家のことや
当時の文壇を含めて、乱歩らを取り巻く状況が
非常に面白かったです。

アナログとか、デジタルとか、紙とか、WEBとか、
ランクや棲み分けをしている今の状況と、
当時の文壇とか大衆派とか、本格派とか変格派とかの議論に
なんだかとっても似ていて興味深かったです。

また、乱歩が久作の死を大変悼んでいるのが随所にみれて
これは久作ファンとして嬉しい所でした。


江戸川乱歩全集 第29巻 探偵小説四十年(下)
江戸川 乱歩
4334740235

で、その下巻は、資料が1/3くらい取っているので、短めです。
戦時中の記録は、内田百間「東京焼盡」を思わせるところがありました。

戦争は嫌だけれど、置かれた状況は受け容れざるを得ない姿勢。
ここは共通している気がします。
昼夜逆転の生活が改まった、というのも同じ。
作家はどうやら同じような生活をしていたようです。

ただ、百間先生と大きく違うのは、乱歩は隣組などに積極的に参加して、
なんと厭人病が治ってしまった点。

上下巻を通して思ったのは、乱歩は自分で納得のいく作品が
ほとんど書けなかった人のようで、全く自身の創作活動を評価しません。
これは、「謙遜している」といったレベルではなく、
本当に自分に嫌気が差しているようでした。
とはいえ、探偵小説界の重鎮であることに変わりはなく、
そう見られていることは受け容れている。
褒められることも大好きで、切り抜き記事を全部取っておいてある。

どうにも一癖ふた癖あるお人のようだと思いました。
いやー、非常に面白かったです。
「幻影城」「鬼の言葉」も読んでみたいと思います。

投稿者 YOUCHAN : 22:14 | コメント (0)

2006年10月24日

星を継ぐもの

星を継ぐもの
ジェイムズ・P・ホーガン
448866301X

多くの方からお勧めいただいたこの本、
ようやく本日読み終わりました。SFを初めて面白いと思いました。
(ヴォネガットはSFとは思ってないので…)

確かに推理小説とSF小説がまじったような構成かもしれません。
ですが、推理小説というのは、あくまでも常識の範囲内で推定できる
事柄を積み上げてあるものだけれど、これはあまりにも知らない世界です。
なので、純粋に物語を追う事に専念しました。

この物語は、理論的な物事が積み重ねられてゆき
その過程が延々と綴られている形式をとっていますが、
解決の糸口を見つけたハントの描写は、これまでの現実的で
息苦しいほどに難解な描写とは対照的にドラマチック!
このコントラストを描きたいがための描写だったのかと思うくらい
すごくいいシーンでした。感動しました。

続編は、「ガニメデの優しい巨人」と「巨人たちの星」ですね。
チェックしておきたいと思います。

投稿者 YOUCHAN : 01:59 | コメント (5)

2006年10月 7日

クロイドン発12時30分

「倒叙ミステリのルーツ」といわれるクロフツの名前は
横溝正史が自叙伝の中で何度か紹介していたので、
新装版が出たときに、これは!と迷わず手に取りました。

倒叙というのは、犯罪者目線で描いたもので、
コロンボなどはその形を取っています。

チャールズ目線で、はらはらしながら読んだのですが、
裁判のくだりからは、陪審員制度の怖さが強く印象に残りました。
おそらく、この作品が発表されていた時代と現代とでは、
犯罪に対する見方や価値観に違いがあるのだろうとは思いますが…。
フレンチ警部の謎解きのラストは、実にあっけらかんと
紳士的に描かれています。
だからなおさら怖かった。マザーグースの怖さに近い、かな。

それは別にして。
本来小心者で、ちょっと自己中心的で見栄っ張りだけれど
周囲への気遣いも忘れない、ごくごく普通の一市民、チャールズ。
そんな彼が、どうしようもなく追い詰められた時の苦しみが
痛いほど伝わってきました。
経営難、不況、仕事と恋、そして恐ろしい計画のことで
悩み苦しむチャールズの姿は、ラストで感じた「価値観の違い」とは対照的で、
21世紀に生きるわたしたちにとても似ているように思います。

クロイドン発12時30分
F.W. クロフツ Freeman Wills Crofts 加賀山 卓朗
4150736057

投稿者 YOUCHAN : 14:50 | コメント (0)

2006年10月 6日

アンクレット・タワー

アンクレット・タワー
真田 コジマ
459109474X

どこかでみた写真ですねー。
はい、そうです。NORIちゃんが撮った写真です。
この写真が、装丁に採用されました。
かっこいいデザインに仕上げてもらって、すごーくいいです。
店頭でぜひ手にとって見てくださいね!

投稿者 YOUCHAN : 20:51 | コメント (5)

2006年9月11日

きよしこ

今年は「文学山房」の連載のおかげで
いままでノータッチだった作家さんの作品に
とても沢山触れることができた年でした、
ってまだあと4ヶ月残ってますが。

そんな中で、重松清さんは、梨木香歩さんに並んで
ひときわ心に残る作品を書く方だと思いました。
先日の「流星ワゴン」では泣いて泣いて仕方がない状態で
それでも繰り返し繰り返し読んだわけですが、
「きよしこ」もやはりすごく困った状態になりました。

これを読み終わったあと、心が一杯になってしまって
しばらく仕事ができなくなったからね。

TVやニュースで、事件がおきると「正しいこと」を
さもわかった風にコメントするキャスターや記者たちの放つ言葉に、
わたしは密かに傷ついたりすることもあるけれど、
そんな折に重松さんの本に出合えたことは幸せだったと思います。

ただ、文庫本に収録されている、巻末の第三者による解説は
いらないと思いました。
(実際、解説を書かれてる方も困っておられるように見受けられました)
だって、言いたいことは、文中ですべて書いてある。
重松さんの文章は、切なさを伴った骨太のロックに似ているような気がします。

先入観はいらねぇ。いいわけもいらねぇ。

きよしこ
重松 清
4101349177

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2006年9月 2日

うつし世はゆめ よるの夢こそまこと

この時代がとても好きなので、大変面白い読み物です。
気になる作家がほぼ出てきてたまりません。
今、上巻を読んでいる所ですが、
直木三十五は、直木三十三だった頃があったとか、
乱歩的に、芥川龍之介って探偵小説家なんだなぁ、とか。
夢野久作もちゃんと載ってて嬉しい~。

このシリーズは、カバーワークも手触りもステキです。
そしてこのボリューム。1冊で自立します。箱です。

photo
探偵小説四十年〈上〉―江戸川乱歩全集〈第28巻〉
江戸川 乱歩
光文社 2006-01

by G-Tools , 2006/09/02

photo
江戸川乱歩全集 第29巻 探偵小説四十年(下)
江戸川 乱歩
光文社 2006-02-09

by G-Tools , 2006/09/02


それから、ハードカバーで、ずっと前に書店で見かけて、
手にとってみたものの、ちょっと迷ってしまって結局読まなかったのですが、
文庫版ではあの東雅夫さんが解説文を書いていたので、安心して入手。
ちょっと読みかけましたが、非常によさげです。
……ブゥゥゥーーーーーーーーーン。

photo
ドグマ・マ=グロ
梶尾 真治
新潮社 2003-03

by G-Tols , 2006/09/02

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2006年8月31日

文学山房「流星ワゴン」

流星ワゴン 部分

Manyo10月号がリリースされました。
今月からURLが変わったらしいです。あたらしいURLはコチラ。
連載に個別にコメントとかTBとか打てるようなので、感想なぞありましたら
ぜひよろしくお願いします。

本題です。以前、「流星ワゴン」の感想をこのBlogで書いたのですが、
10月号のテーマということもあり、相当何度も読み返しました。

読み返しては泣き、泣いてはまた読み、を繰り返しました。
以前書いたような感想など、吹き飛んでしまった。
そんな利口な言葉で語る物語じゃないと思った。

わたしには言葉でこれをどう言っていいかわからなかった。
書き添えたエッセイも、悩んで時間かけたくせに、なんだか…。
(こんなこと言っていいのか!?)

ただ、絵にしたかったのは、橋本さんと健太くん親子でした。
わたしが大好きなキャラはチュウさんだし、主役は「僕」なんだけど
絵にしてしまったのは…

この二人の親子、なのでした。

投稿者 YOUCHAN : 22:11 | コメント (0) | トラックバック

2006年8月 6日

うたかたの日々

なんだか読書記録のBlogと化してる気がしますが
本に興味のない人には「なんだこりゃ」ですよね。スミマセン。

うたかたの日々
ボリス ヴィアン Boris Vian 伊東 守男
4151200142

ボリス・ヴィアンの小説ですが、「日々の泡」という邦名で
新潮社からも出てるのですが、どっちがいいのかはわかりません。

翻訳は、最初は実はちょっととっつきにくい感じがしましたが、
幸せの頂点から転落していく様がリアルで、残酷で、美しくて、
最終的にはこちらの版でよかったかな、と思いました。

うたかたの日々
岡崎 京子
4796632751

岡崎京子版も読みました。
キャラクターがぴったりでしたね。雰囲気が合ってて、とてもとてもよかったです。

唯一、残念なのは…心臓抜きがあやふやなこと。
残酷な描写に対して弱腰になってるのかな…と思いました。
ヘルタースケルター」のような凄みがあってもよかったかも。

投稿者 YOUCHAN : 22:53 | コメント (0) | トラックバック

2006年8月 2日

猫とオンデマンド

横溝正史の「探偵小説五十年」(1977復刻版)という本が、
オンデマンド出版されたのを知って、購入してみました。
「昭和47年、著者の古稀記念として出版され、昭和52年に再刊されたまま、
久しく入手不能であったエッセイ集」ということ。
購入したのは「講談社オンデマンドブックス」から。

横溝正史「探偵小説五十年」
これが来た本。

嬉しい! 嬉しい~んだけど……、正直、安っぽ~~い。

これで1,785円は、高ぁ~い。
せめてカバーはかけて欲しい…表紙の紙も、もう少し丈夫にしてほしい…
と、購入者アンケートには書きました。

横溝大賀
大賀、横溝正史を読むの図。うそ。

暗かったので、ぼけぼけ画像ですが、大きさ比較にしようと思って。
むしろ、大賀 いやがってます。ちっ。

その関連で知ったのですが、小松左京全集がオンデマンド版で販売しているそうです。
この方、全集を作るとなると、100冊超えちゃうんだそうです。
100冊!スゴイ執筆量!ひゃ~~。
オンデマンド出版でないと不可能だったらしく、小松先生もお喜びです。

出版社の都合で手に入らなくなった本が、こういう形でちゃんと読者の手元に届くシステム。
すばらしいと思います。もっと普及して、質のいい本になって欲しいと思います。

古本屋をあたる、という冒険も楽しいものではありますが…。

投稿者 YOUCHAN : 19:11 | コメント (0) | トラックバック

2006年7月23日

ヒャクテン終了

立体ヒャクテンマン展11thは、本日(23日)に、無事終了しました。
夏休みに入って、スグに最終日だったので、
お子さんが来場して遊べる機会が少なかったのがちょいと残念でしたが、
それでもみんな、一様に楽しんでくれたようで、ホントよかったです。

16パズル
NORIちゃんと共同で作った16パズル。檜のブロックの絵合わせです。

おてほん
壁には「おてほん」を用意。大人はお手本を見ながら絵合わせをしますが
こどもはそんなの見やしません。

シラリンとわたし
日本を代表するベテランイラストレーター、シラリンさまと共にかぶりモノに興ずるワタクシ。

たろさんロボ化計画
日本を代表するおさかなイラストレーター、友永氏 かぶりモノを強要されるの図。

ヒャクテンは、出展する方だけじゃなくて、見る方も楽しめなくちゃねー。
(※写真、追加しました)

ご来場くださった皆様、ありがとうございました。

ところで、当番に出かける間の電車の時間は読書タイムなのですが、
今回は3冊。全部横溝でした。横溝ブーム再燃中です。

仮面劇場
由利モノ短編集です。
やはり由利先生の時代は、耽美的な作風が漂う感じがしていいな~と思います。


悪魔が来りて笛を吹く
短編の次は長編がいいなと思い、コレにしました。
時代があちこちに飛び、登場人物がどんどん増え、あれ?この人誰?状態に陥りつつも、
ぐんぐん読ませちゃう面白さは秀逸。やっぱ横溝は長編がいいです。

「イカの墨のようにドズ黒いものが腹の底に広がるような」と、
「熱い鉄串を脳天からぶち込まれたような衝撃」という表現が特に多発してましたが、
そんなの気になりません。(気にしていては読めない)

全体に、ちょっとダークな雰囲気が覆っていて、個人的に好みです。


蝶々殺人事件
由利先生モノ最後の長編。「本陣殺人事件」と同時進行で書かれていたとは思えません。
3本指に入るかもしれない出来だと思います。

この冒頭で、由利先生が疎開先で甘薯作りに精を出していた下りは、
小栗虫太郎へのオマージュだったに違いありません。

小栗虫太郎は、疎開先で甘薯を作っていて、
「砂糖が取れたら君の所に送ってあげるよ」と手紙を横溝に送ったそうです。
「届くのを楽しみにしています」という返事と入れ違いに、
小栗の訃報を知らせる電報が、ご子息から横溝宛に届いたのだそうです。

かつて横溝が喀血して、穴を開けた原稿を埋めてくれたのが小栗虫太郎でした。
そして今度、小栗があけた新連載の穴を埋めたのが、この「蝶々殺人事件」。
このエピソードは、「横溝正史自伝的随筆集」の『ピンチヒッター』に書かれていました。


余談ですが、今日「蝶々殺人事件」を行きがけに読み終えてしまいました。
帰りに読むものがない…しまったぁ…と、わたしはボーゼンとしてしまいました。

NORIちゃんいわく、そのときのわたしは、とても悲しそうな顔をしていたそうです。

投稿者 YOUCHAN : 23:14 | コメント (5) | トラックバック

2006年7月22日

「百間先生、月を踏む」

今日、犀のTシャツ展の帰りに、郵便局へ寄ったら
その途中に「コーヒーノラや」というナイスなネーミングのカフェに遭遇しました。

コーヒー のらや

時間がなかったので、カフェには寄れませんでしたが、
25日の当番日の帰りには寄りたいと思います。

で、ノラやつながりで、今日はこの本です。

「百間先生 月を踏む」 久世 光彦

4022501863

久世光彦さんの最後の作品は、百鬼園先生がモチーフでした。
絶筆のため、ラストは尻切れ蜻蛉です。残念。

それにしても、もし、この本が、ちゃんと久世氏の手によって
出版されたとしたら…
文中の架空の『百間先生』が書いた、架空の『文学作品』は
も、もしかしたら、旧仮名遣いになったのでは…と思いました。
いえ、期待しました。

もうひとつ気になったのが、『小田原』という地名。
これが、どうにも不思議な印象で…。
あの百間先生が、『小田原』に滞在した、という『架空の事実』が、
架空とはいいながら、なぜかしっくり来なくて。
他にも、細かな描写で「そうは先生は言わないんじゃないかな」と
思う節は、ところどころにはありました。

ただ、現代に百間先生がよみがえったような感じが堪能できて、嬉しかったです。

久世光彦さんのご冥福をお祈りしつつ…。

投稿者 YOUCHAN : 00:01 | コメント (0) | トラックバック

2006年7月21日

渦中の人

先日、重松清さんの「流星ワゴン」を一気に読み終えた。
とても面白い展開に、ページをめくる手が止まらない。
なのに、どうして読後感がすっきりしないのか。
NORIちゃんも、「流星ワゴン」にハマった。
「これを読むために電車に乗るのが楽しみ」とまで言っていた。
けれど、読了後、彼は「うーん」といったきり、言葉を失った。

ところで、先々月の個展の人待ち時間で、
わたしは梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」を読んだ。
児童文学ということもあり、平易な表現で綴られているし、
とても薄い本だから、ライトに読めていいかなと思ってとっておいたのだ。
読み終わるのに時間はかからなかった。
ところが、読後感は、その日一日の私を占領してしまった。

「流星ワゴン」と「西の魔女が死んだ」には、共通点がある。

 1) 大人とこども・親と子・家族の関係が描かれている
 2) 死について触れられている
 3) いじめ問題が関係している
 4) ファンタジックな要素がありながら、甘くならない展開になっている

なにが違うのだろうか。
文学作品を比較していいとは思わないけれど、
共通点がここまであるのに、響くものが違うのはなぜだろうか。
ずっと考えてきたけれど、一ついえることは、
作家の立場なのかもしれない、と思った。

重松さんは、「自分が親になったから書けた作品」とあとがきにものこしている。
つまり、『渦中の人』なんだ。
渦中の人が、自分自身と重ね合わせて描いているから感動的であり、
身につまされるし、リアルなんだと思う。

一方の、梨木さんは、ご自身のことをあまり語らない方なので、その実態はわからない。
インタビューをほとんど受けない、という話を聞いた事がある。
だから、どういう立場の方かはわからないけれど、
「りかさん」「からくりからくさ」「家守綺譚」そして「西の魔女が死んだ」、
これらに共通する、湖のように森閑としている、あの感じ。それから、希望。

彼女は、『渦中の人だから「西の魔女が死んだ」を書いた』ようには思えないのだ。


もしかしたら「流星ワゴン」は、男性作家らしい作品の典型なのかもしれない、と思う。
あれだけ長い話を、飽きさせずにぐいぐいひっぱる展開、
魅力的なキャラクター(特にチュウさん)。
読んでよかった、と思った。いい友達に会えたような感じ。
ただ、自分は『渦中の人間ではない』から、釈然と出来ないのではないだろうか。

わたしは、「流星ワゴン」は「もしもあのとき~してたら」の「たら」「れば」について
描いた物語として捕らえ、途中くらいまでは実は大きく感情移入していた。
けれど、後半に向かうにしたがって、その感情移入が難しくなってしまった。
だから「うーん」となってしまったのではないか。

一方の「西の魔女が死んだ」は、読んだ後、しばらく放心状態が抜けなかった。
私の心のある部分を、そっとなでられたような感覚。
梨木さんの作品は、どれをとってもそういう読後感がある。

上手くいえませんが、なんとなく、そんな気がしました。

ところで「西の魔女が死んだ」は、文庫版のほうがオススメです。
先日、先に発売になっていた、単行本の方を書店で見かけたので、手にとってみたら、
ラストの大切な2行の扱いが、文庫版のほうが優れていたので。

あの2行に、涙したのだから、わたしは。

流星ワゴン
重松 清
406274998X

西の魔女が死んだ
梨木 香歩
4101253323

投稿者 YOUCHAN : 01:23 | コメント (2) | トラックバック

2006年7月18日

「騙されたと思って買ってください」

と帯に書かれていました(確か)。手書き(を印刷した)文字でした。
その心意気に打たれました。やるな、創元推理文庫。
ということで、騙されてみました。

ディクスン・カーは、横溝正史が最も影響を受けた作家でした。
「夜歩く」はカーの小説と同名です。ものすごく尊敬していたんじゃないでしょうか。
どんなのかなーと気になっていたのです。
それに加え、「バゴンボの嗅ぎタバコ入れ」という短編集がヴォネガットにあるのです。
カーのこの長編タイトルのパロディだったんですねぇ。

それで、肝心のカーの小説ですが、なかなか面白かったです。
由利・金田一モノが好きな人なら、結構肌に合うと思います。

皇帝のかぎ煙草入れ
ディクスン・カー 井上 一夫
4488118119

バゴンボの嗅ぎタバコ入れ
カート ヴォネガット Kurt Vonnegut 浅倉 久志
4152083093


それにしても久しぶりにBlog更新しました。
すごーくネタたまってて、Blog書きたかったのに書けなくて...。
やーっとBlogが書けます!!

......あ。すごーく、というほどでもないかもしれない(汗)

投稿者 YOUCHAN : 18:45 | コメント (4) | トラックバック

2006年4月20日

最近よかったCDと本

とんとご無沙汰してしまったので、久しぶりにレビゥなど。

Everybody Loves a Happy Ending
Tears for Fears
B0002M5T34

TFFとしては通産で5枚目か6枚目?(汗)になるけど、
カートが復帰したので、どちらかといえば「The Seeds of Love」の
流れのアルバムという感じです。
やっぱ、ローランドとカート揃ってこそのTFFだったなと思います。

この新作(といっても発売されたのは2004年)、
何度か聴く内に、中毒症状に陥りました。すごくいいです。
そういう点においても、「The seeds of love」の再来だと思いました。
20歳の頃、TFFの「The seeds of love」と
ゴダイゴの「Flower」ばっか聴いてました。中毒でした。

なのに、国内発売されていません。日本のレコ会社、何で出さないかなぁ…。
インポートで買うしかないのです。そこが残念。


横溝正史自伝的随筆集
横溝 正史
404883746X

横溝のおじちゃんが書き残した随筆のアンソロジー集です。
小説とはまた違った語り口。随筆、なかなかいいです。
明治、大正の時代背景を、自身の生い立ちになぞらえて描かれていたり、
「新青年」の時代の思い出など、
横溝ファンじゃなくても充分楽しめると思います。

逆に言えば、横溝フリークにとっては物足りないかもしれません。
「それ知ってるよ!」みたいな話が寄せ集められてるという
厳しい評論もありますし。
ですが、個人的には、「新青年」にまつわる話がたくさん読めて
すごく楽しく読めました。

小栗虫太郎との話、ちょっとほろっときました。

投稿者 YOUCHAN : 15:37 | コメント (0) | トラックバック

2006年3月19日

斧琴菊(よきこときく)

「犬神家の一族」を読了いたしました。
ドラマで、ついこの前見たとこだったので、オチは知った上でしたが、
読み終わったあとのこの余韻は、いい映画を一本観終った後の
感動に似ています。

個人的には、先日のドラマの三田佳子の松子は
ホンっトぴったりだったなぁ〜と感心しました。

それから、ラストの大広間での謎解きの場面で
香琴女と松竹梅三姉妹との絡みがないのがちょっと残念...。
ですが、ラストが今回は、いいっ!
松子奥様、もうね、ホントいいっすよ。
やっぱ悪女っていいですね。生まれ変わるなら悪女だな(か?)

と、内容にはほとんど触れずに感想を書いてみました。
オススメです。ううーん。


...「獄門島」、稲垣金田一でドラマ化してほしいなぁ...。

投稿者 YOUCHAN : 12:12 | コメント (4) | トラックバック

2006年2月25日

獄門島

獄門島

「本陣殺人事件」の次は「獄門島」と決めておりました。
とてもよかったです。「本陣」より断然綿密、オモシロい。
耕助も、周囲の登場人物もとても人間臭くて、そこがいいですねぇ。
三姉妹のへんてこぶりはなんとも言えない印象でした。
「獄門島」に登場する了念和尚さんが、
わたしの田舎でいつも父の法要をしてくれる和尚さんに
イメージがかぶって仕方ありませんでした。
って余談ですね。

…それにしても。事件解決の鍵が放送禁止用語になってる以上
「獄門島」のTVドラマ化は難しそうです…。
(犬神家、八墓村、女王蜂、どれもすばらしかった!!)
この若き金田一こそ、ゴローちゃんにやって欲しいと思ったけど。
難しいかなぁ。映画なら大丈夫かな。でもTV放映できない点でNGでしょうねぇ。
ああ、残念。

今回のカバーもいいですねぇ。うっとりします。
大路浩実さん、すばらしいカリグラフィです。拍手!

投稿者 YOUCHAN : 15:17 | コメント (4) | トラックバック

2006年2月22日

自分の感受性くらい

茨木のり子さんがなくなったそうです。
大変驚きました。

茨木さんといえば「自分の感受性くらい」をよく引用している方を見かけます。
とても厳しい、がんと頭を殴られるようなコトバの強さに
皆、心を打たれるのです。

しかし。しかし。

「自分の感受性くらい」は、戦争で茨木さんが失いそうになったもの…
美しいものや、心優しいなにもかもを否定することに慣れきってしまった
「自分自身」に向けて書かれたものであり、
一般的に言われてるように、第三者を叱るために書いたものではない、と
茨木さんが、大学生のインタビューに答えておられました。

わたしは、これを読んで、茨木さんの深いところを
触ってしまったような気がしています。
現代に生きるわたしたちが「戦っている」状況と
当時、本当の「戦争」に晒された者とでは比べようがないではないか…。
そこに頭をガンと殴られたように感じました。

茨木さんの詩には、戦争のこと、家長制度のこと、
古くからのしきたりに囚われているさまざまな事柄に触れた
すばらしい詩がたくさんあります。

どう読むかは、読み手の感性にゆだねられてよいはずです。
きっとこの先も「自分の感受性くらい」に共感する人は
増えていくことだろうと思うのです。
思うのですが、そうであれ、そのコトバの背景にある状況も
きちんと伝える必要があるのではないか、とも。
ああ、まったくもって表裏一体です。

ご冥福をお祈りいたします。

おんなのことば
茨木 のり子
4924684783

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2006年2月21日

本陣殺人事件

本陣殺人事件

先日、古書で購入した「鬼火」に脳天を直撃されたわたしは、
早速他の作品もトライすることにして、
金田一登場第一作目となる「本陣殺人事件」を読むことにしました。
ちょうど、カレンダー展とか打ち合わせとかで外出することが多かったので
行き帰りの電車の中で読んでいたのですが。
…いや〜〜〜〜、面白い! すごいよ横溝のおじーちゃん!

こんなに集中して読める本に出会ったのは久しぶりです。
電車の中で映画を見終わるような感覚です。

「本陣殺人事件」は、第一作ということもあってか、
個人的にはちょっと風呂敷広げすぎてるかな…という感じでしたが
その他の短編2つ「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」もあわせると
非常に充実した読後感でした。

実を言うと、ミステリーの類があまり好きではなかったので
横溝正史はこれまで避けてきたのですが、
それはまさに食わず嫌いでした。

モチロン、そのトリックにもぐいぐい引き込まれていくのですが
人間味が溢れているといいましょうか、表現がとても豊かなところが
やはり他のミステリー作家とは一線を画している気がいたします。
SF界におけるヴォネガットのような?
いや、そんなにミステリーを読み込んでいないわたしに
そこまで言い切る資格はありませんね…。

現在は「獄門島」です。あっ!といいところで
電車が到着してしまいました…。続きは明日の搬出日にとっておきます。

ところで余談ですが、この新しい角川文庫のシリーズのカバー、
素敵だと思いませんか?
わたしはとても気に入っています。

旧文庫の、あの杉本一文さんの素晴らしいイラストがあまりにも鮮烈でした。
その上で、新しいシリーズを作るなら、このカリグラフィのデザインは
実に正当だと思います。
中の扉デザインもすばらしいです。一度、書店で手にとって見てみてください。

投稿者 YOUCHAN : 15:58 | コメント (0) | トラックバック

2006年2月 4日

贋作猫を読みながら

寝る前の読書。
それはわたしの視力を著しく低下させながらも、精神の安定を図る上で欠かせないもの。
(宇宙、それは最後のフロンティア風だなー)

で、「贋作吾輩は猫である」を読んでいたわけですが、
読んでいる間に大福がわたしの右腕をふみふみ、そしてじきにその場で、ごろん。
これが、いいっ!
かわいい、あったかい、ふわふわ。そして猫尽くし。本の中身も猫、わたしの傍らも猫。

ああー至福。

贋作猫は、風船画伯の語り口が独特で、なんだかほんわかしてしまったのと、
「小さいお神さん」の描写がやっぱり優しいこと、
それから周囲の登場人物たちが、五沙弥先生の偏屈ぶりにブーブー文句を言う辺り
実は百鬼園先生は偏屈オヤジの自覚がちゃんとあった、ということが
読み取れて、とても面白かったです。

次はいよいよ「東京焼盡」だなぁ。
(現在、講談社版内田百間全集の第5巻目です。半分まできました)。

贋作吾輩は猫である
内田 百間
4480037683

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2006年1月21日

鬼火

こんなに長いこと 俺を一人にさせといて〜♪ の歌いだしで始まる
moonridersの「鬼火」は、ルイ・マルの映画のことと思いますが、
今日わたしが挙げた「鬼火」は、横溝正史の探偵小説を指します。

当初は「蔵の中」が読みたくて、文庫を中古で購入しました。

かつて、あんなにたくさん出ていた、角川文庫はほとんどが絶版で
今、出されているのはアンソロジー集のみである事実を知り、驚きました。

ゴローちゃんが金田一を演じてるドラマも第3弾まで来てるし
(わたしは個人的には稲垣金田一が一番好き。怖さとユーモアのバランスが
推理小説のテイストには不可欠だと思うから)、
てっきり横溝はばりばり販売中だと思っていました。

角川〜〜〜〜〜〜〜!そりゃないよ〜〜〜!


子供のころ、母が横溝正史の大ファンで、家に大量の横溝本がありました。
カバーの絵が怖くて、わたしはその当時はオヨヨ大統領シリーズのような
テイストのものを好んでいましたため、読む気にもなりませんでした。

が、あのカバー絵だけは忘れられませんでした。
特に印象深かったのが「病院坂の首縊りの家」「真珠郎」、そして「蔵の中」でした。

当時の母の読書量は半端なものではなく、
一回読んだらそれを読み返すということもなかったようです。
溜まる一方の文庫の処分に困り、その大量の本を束ねて、
当時、近所に出来たばかりの古本屋に自転車で持っていって、
二束三文の値を付けられた思い出がよみがえりました。

あああ、今おもえば!あの大量の文庫群!!もったいない〜〜〜〜〜!


きっとそんな人はたくさんいただろうと思いますが、
注文した文庫を入手したところ、タイトルが「鬼火」でした。

あれ?見覚えのあるカバー絵と違う。第一、タイトルも「蔵の中」じゃない、と
一瞬、書店が間違えたのかなと思いましたが、
「蔵の中」も収録されていました。なんだー。一安心。

「蔵の中」、期待してた通り面白かったです。
…でも、しかし、否、否、否(って感じ)、表題作「鬼火」は
ページをめくるのがとめられませんでした。
文庫は、電車の中で読むようにしているのですが、帰宅後
続きがどうしてもどうしても気になり、結局最後まで読んでしまいました。

こんなにおもしろいとは…!!感動しました。すごいぞ横溝!!


購入した、角川版には一部伏字がありましたが、創元推理文庫の
「日本探偵小説全集 (9)」版の「鬼火」は発表時の削除訂正を復元、
そして当時の挿絵も全点復刻されているそうです。
なんだー、こっちにすればよかったなぁ。知らなかったなぁ(笑)
「鬼火」、おすすめです。

ルイ・マルの映画も観たいなー。

投稿者 YOUCHAN : 16:03 | コメント (0) | トラックバック

2005年11月20日

もどかしい思い

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梨木香歩さんの「りかさん」を読了。
この本を上手く言い表す言葉を持てずにいます。
でも、それはそうです。
梨木さんが、本一冊かけて表現していることを
簡単な言葉で表せるはずもない。

言葉にできないような、もどかしい思いや、
簡潔にできない相互のバランスを、
表現できるようになりたいなぁと思います。

わたしの場合は絵にすることだろうと思います。
そうなれるのだろうか。

自信はないけれど。


落ち着いた佇まいで。

投稿者 YOUCHAN : 16:25 | コメント (2) | トラックバック

2005年9月13日

「家守綺譚」

家守綺譚

昨夜、「家守綺譚」を惜しみながら読了。
ところどころで泣いてしまいました。
泣くような本ではありません。
梨木さんの優しい視点が折々に感じられて、じーんとしてしまうのです。

こういう本が厚く支持されて、書店で平積みだなんて。
こんなに静かで優しく暖かな文学を受け入れられる日本人の感性も、
まだまだ捨てたものではないなぁ…なーんて
ちょっと偉そうに思ってしまいました。

キレイな日本語の、佇まいのいい一冊でした。

投稿者 YOUCHAN : 02:35 | コメント (2) | トラックバック

2005年9月 3日

二冊目は慎重

家守綺譚

今日、「家守綺譚」が届いたので、最初の「サルスベリ」を読む。
とてもよい。ああこれはやられたなと思った。
梨木香歩さんという作家さんの文体、私のストライクゾーンだ。
美しい日本語、情緒ある空気感。
じっくり、じっくり読みたい本だ。読み終わるのが惜しい!!
うーん、やられた。

梨木香歩さんは、他の作品も評判がすこぶるよいけれど、
「家守綺譚」をここまで気に入ってしまうと、
次に読む「二冊目」の本が非常に心配である。

思い出すのが、川上弘美さんだ。
私は川上弘美さんの「センセイの鞄」があまりにも大好きすぎたせいか、
二冊目の「パレード」が全然受け付けなかった。
それに似た経験としては、カーネーションの「Super Zoo!」が大好きすぎて、
他のカーネーションのCDを聴いても、結局「Super Zoo!」に勝てない、とか。

そういえば、百間先生の「ノラや」も感動しすぎて
そのあと「御馳走帖」に走ったんだけど、これがきっかけとなって
次々に読み続けてしまった。よい出会いだった。
いや、なかなかこうはいかない。

だから私は、二冊目には慎重になっている。

( 逆に、いけ好かないなぁと思いつつ、どこか気になって
 結局何冊も読むことになった山口瞳とかもいる。
 山口瞳は好きな作家と明言してかまわないと今は思っている )

投稿者 YOUCHAN : 23:24 | コメント (2) | トラックバック

2005年8月21日

巷説 天保水滸伝

4309016006

山口瞳の「巷説 天保水滸伝」を読み終えた。
とても面白かったんだけど、ああ、どうしてそこで終わってしまったのか。
大喧嘩の前というか、きっかけの場面で終わってる。
続きを書くって言ってたのに。
読みたかったなぁ。
そこが残念。

それにしても、歴史上の人物で地元では親しまれているのに
一般的には嫌われている人って多いんだなぁ。
私の地元で言えば、吉良上野介。
吉良町は私の地元の隣にある、今も緑の多い美しい町。
吉良の殿様は、赤馬に乗って農民たちの様子を見て回った
とても地元では人気の高い人だ。
でも、それを言うと「地元の人ってそういうよねー」っていう人、
いるんだよね。
なんだかむっとしてしまう。

冒頭で、飯岡に取材に行った山口瞳が
「どうせ作家はろくなこと書かない」って
結構地元の人から冷たくされてるんだけど、その気持ちはわかる。
助五郎といえば悪いやつなんだよね、一般的には。
心無い一言に地元の人は結構傷ついてるのだ。

助五郎さん。小説でこんな風にちゃんと書いてもらってよかったね。
吉良の殿様も書いてもらえばよかったのに。

余談だけど、私の絵本「リトル・ベティー・ブルー」を出してくれた
瑞雲舎さんは、泉岳寺にある。なんという因縁!
一度だけ、泉岳寺に行った事がある。
入り口には、大石内蔵助の大きな像があったり
当然のことながら、四十七士のお墓もある。
私がここにいていいのだろうかと、なんだかちょっぴり複雑だった。

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2005年8月 3日

タイタンの妖女

読んでたつもりが読んでなかった「タイタンの妖女」読了。
電車に乗っていたので、涙をこらえるのに必死だった。
ヴォネガットを読むとわたしはかなりの確立で泣く。

「きみの死の近づいているのを気づいたときにはね、宇宙のさすらい人」とサロは催眠的な口調で言った。「すばらしいことが君に起こるよ」

タイタンの妖女
カート・ヴォネガット・ジュニア /浅倉 久志:訳
4150102627

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2005年7月31日

黒蜥蜴/巷説 天保水滸伝

夕方になってから青葉台までちょっと出かけた。歩いていく。
青葉区はアップダウンが都内並みに激しいので
隣の駅まで歩くのはとてもよい運動になる。

NORIちゃんの靴を見立てたあと、書店に行った。
山口瞳の本が!「巷説 天保水滸伝」。
真っ赤なカバーにトラの絵がカッコイイ。そして、前書きがいい。
ううう〜〜ん、やはり手にとってしまった。
わたしは、この作家の文体が好きなんだなぁと改めて実感した。

そして、江戸川乱歩の「黒蜥蜴」。創元推理文庫版。
当時の挿絵が収録されている。とってもデカダン!とってもステキ!
ということで、お休み前の百間先生をちょっと中断して
昨夜から「巷説 天保水滸伝」。「黒蜥蜴」は電車で。楽しい〜〜!

巷説 天保水滸伝
山口 瞳
4309016006

黒蜥蝪
江戸川 乱歩
4488401058

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2005年7月20日

じみへん

中崎タツヤの「じみへん」が我が家でブームです。
NORIちゃんもBlogで取り上げていますが、
こちらでも取り上げておきます。はいっ、どーぞ。

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2005年6月25日

仕事がはかどらない悩み

今、講談社版の全集の第3巻です。だいぶ後ろに来ました。
「百鬼園日記帖」を読んでいますが、いやー面白い。
若き日の百間先生の日記で、
大正時代の日記を、昭和になってから出版したものです。

そこには、いろんな家庭の雑事のために心乱され、
仕事がまったくはかどらない様がありありと描写されています。
士官学校教師をしていた百間先生は、自宅に戻ったら
依頼された翻訳をしなくてはならないのに、全然はかどりません。
家族が交代で風邪を引いたり、病気になったり、
友人の身内に不幸があって、その相談に乗らなくてはいけなかったり、
気持ちが乗らなかったり、などなど。

それで、なんだかんだで仕事が押してしまい、
翻訳の仕事をくれた人に対し、だんだん後ろめたさが募ってきます。
その切迫した描写は、自宅で仕事をしている人であれば
泣けるくらい共感を呼ぶのではないかと思います。

それにしても29歳にしてこの文章力。すばらしいです。
…29歳にしてこの借金地獄はどうかと思いますが。

4480039007百鬼園日記帖
内田 百間
筑摩書房 2004-05

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※上記紹介の筑摩文庫版は、新仮名遣いです。

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2005年5月20日

合言葉はオヨヨ

オヨヨ城の秘密

確か小学生のときだったと思う。
どういう経緯で読み出したのかまったく覚えていないけれど、
「オヨヨ城の秘密」や「怪人オヨヨ大統領」といった
オヨヨ大統領シリーズにはまっていた時期があった。
といってもこの2冊しか読まなかったけれど。

作者は小林信彦さんである。
数年前に、古書で「合言葉はオヨヨ」と「秘密指令オヨヨ」を
発見し、大喜びで入手した。しかもハードカバーであった。
(ちなみに発見した古本屋の名前は「オヨヨ書林」という。
なぜオヨヨかたずねたところ、オヨヨ大統領から取ったとのことであった。
最近、わたしは森田たまの本をオヨショ経由で購入した。
オヨショのラインナップは結構ツボなのだ)

最初は子供向けに書かれていた(らしい)けれど、
そのシリーズの続編は、大人向けのエンタテインメント小説に
なっていた。ああ、懐かしや、オヨヨ大統領。
憎めないのがニクいのさ、大統領〜〜っ!

今、復刊投票中です。8冊セット、出てほしいです。

復刊ドットコム/オヨヨ大統領シリーズ
絶版になる小林信彦作品
オヨヨ書林

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2005年5月 3日

血族

血族

山口瞳の「血族」を読了。
ここ1年くらい、寝る前に読む本は内田百間と決まっていた。
それを中断してまで読みたかったという点で、まさにわたし的には快挙となる1冊である。

わたしは、山口瞳のことはあんまり好きではない。
この作家は、とてもあまのじゃくだ。
それに、非常に男性的な視点を持つ人だと思う。
そこがどうも鼻につく。鼻につくのだけれど、「血族」は本当に面白かった。
好きな作家であっても好きになれない作品があるのと同じように、
好きな作家ではないのに、面白く読める作品があるのかもしれない。

なにがそんなにわたしを惹きつけたのだろうか。
「血族」は、郷里を離れて暮らす人には
心情的に共感する点が多い作品ではないかと思うのだ。
この本を読んでる最中に、私自身伯母が亡くなり、
愛知県の片田舎に行く体験をした。
親族と会って話したり、懐かしい郷里を訪ねている間中、
ちょうど山口瞳が柏木田を訪れるくだりを脳内でずっと反芻していた。

境遇は人それぞれであるし、時代も違うから
この作家と私自身とがオーバーラップするということはない。
しかし、長い年月を経て蓄積された隔たりというものが、
そこには共通して流れてはいないだろうか。
たとえば、言葉。
その地方に暮らす人と、長らく地域から遠く離れた者とでは、
もうその語る方言は別のものになっている。
都会暮らしが長いのに無理をして出生地の言葉を話す人が
空々しいのはそのせいだろう。
親族の中では「他人」に、より近づいているとも言える。

この小説の場合は、山口瞳の出生のいきさつが
彼を親族の中で異端たらしめる結果になって、
彼は長らくその疎外感に苦しめられてきたのだと思う。
これは、長く地元を離れてしまった者が感じる
疎外感に根底は近いのではないかと思う。
山口瞳があまのじゃくで、自分自身のことを真正面から
受け止めることがどうにも苦手なのは、
疎外感から身を守るために必要なものだったのかもしれない。
わたしは、その部分にいやなものを感じながら、共感してしまった。

非常に気になったので、「血族」の続編(?)とも言えるらしい
「家族」を読むことにした。
わたしは本当に山口瞳が苦手なのだろうか?

投稿者 YOUCHAN : 23:07 | コメント (3) | トラックバック

2005年4月23日

違うかもしれない

NORIちゃんから「ヴォネガットを読むならどれがいい?」と
聞かれたので、ちょっと考えた末、「猫のゆりかご」を貸した。
そしたら、どうもいまいちだったらしい。
「ヴォネガットは違うかも」ということたっだ。

私自身、電車で読む文庫がなくなったので、
「猫のゆりかご」を貸したのと同時に、「ジェイルバード」を読み返していて
面白くて仕方がないとおもっていた。
なので、こっちのほうがよかったかなと思いつつ、
「猫のゆりかご」も読み返してみた。
が、やっぱ「猫のゆりかご」もおもしろい。
いや、やはり「猫のゆりかご」のほうがお勧めだと思った。

かくいう私、山口瞳の「血族」を読んでいる。
半分くらいまできているけれど、何かが違うという気持ちが抜けない。
前に読んだ山口瞳のエッセイがしっくりこなかったのだけれど、
トーンが全然違うと聞き、「血族」を期待したものの、
エッセイと根底が流れるものが同じだった。
系統が内田百間に近いので感性が合うかなと思ったけど
ちょっと違うみたい。漱石の「猫」がいまいちだったのに近い。
そういえば、系統が同じで、ヴォネガットの弟子(?)である
アーヴィングも、わたしにはイマイチだったのを思い出した。

音楽の場合、系統立てて聴くと、そんなにハズレないけれど、
こと文学となると難しいというのは、
なかなか不思議で面白いなと思うこのごろでありました。

猫のゆりかご
カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤 典夫

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2005年4月10日

OSAMU GOODS STYLE

通販で、原田治さんの30年間に渡るOSAMU GOODSを
まとめた本が販売されていたので、迷わず購入した。
オリジナルポストカードと、直筆サインがついてくる、
というおまけつき。

届いたサインは、鉛筆書きだった。なんだか嬉しい。
osamu's sign

中高生の頃、ステーショナリーやバッグなど、
あらゆるものをOSAMU GOODSで揃えていた。
かっこよくて、かわいくて、ぴりっとスパイスが効いた
あのデザインが大好きだった。
今でも原田治さんの絵を見ると、購買意欲が
通常の3倍まで膨れ上がるわたくしでありました。

原田治さんのBlogから購入できます。

投稿者 YOUCHAN : 21:09 | コメント (5) | トラックバック

2005年4月 2日

ルルとミミ

Mさんより、夢野久作「ルルとミミ」を送っていただいた。
1979年刊。古書流通で12,000円以上する、定価950円の絵本である(※)。

お話そのものは、大正15年に「戸田健 作画」として世に出たもので、
ちくま書房の「夢野久作全集1」や、
葦書房「夢野久作著作集」、オンラインでは「あおぞら文庫」からも読める。

内容は、とても久作らしい、悲しく、美しく、儚い童話だ。
モノクロの切り絵を、出版当時まだ存命だった龍丸さんと、
地元在住の切り絵画家の方とで、カラーで復元したものだ。
たいへん美しい。

が、今回、この絵本の奥付にある「戸田健」という名前に
ひっかかりを覚えた。ので、ちょっと調べてみた。

まず、あおぞら文庫の底本になっているちくま版には、
「戸田健は久作の別ペンネーム」とある。
これは、ずいぶん乱暴な解釈ではなかろうか。
なぜなら、戸田健という人は、久作の義妹の婿の名前だからだ。

そして葦書房版久作全集の解題によれば、
「ルルとミミ」は戸田健の作画ということになっているが、かなり久作が手を入れた、
そして、ストーリーは久作が創作した(クラ夫人の証言あり)、とある。
しかし、表に久作は決して出ないようにしたらしい。
それは戸田健に花を持たせたのではないか、といったような憶測が書かれてあった。
非常に久作らしいエピソードであり、改めて感心してしまった。

今日手にしたこの絵本は、ご子息である龍丸さんが監修しているが、
解説や推薦文には久作の作品という色が濃く、
戸田健をにおわせるものが全くない。
奥付と、久作が描いたとされる「とだけんさくぐわ(戸田健作画)」
というタイトルカットのみだ。
なのに、どの解説にも、誰が何を担当した作品なのかが明確でなく、
ただ、「夢野久作 ルルとミミ」とあるだけだ。

ここのところは、一ファンとしては非常に気になるところなんだけど、
戸田健がこの作品にどう関わったかの真実は、推測の域を出るものではない。
やはり家族の問題なんだろうな、と思った。

どちらにしても、この童話作品は完成度もなかなか高いと思うし、
だったらそれでいいじゃないか、とも思ったりした。

…あーあ、また趣味に激しく偏った日記を書いちゃったなぁ〜。
しかも、推測の域を出てないし。


※高値で取引されている古書が久作関連には多い。
絶版ではないにしろ、重版の見込みのなさそうな葦書房「夢野久作の日記」も含めて、
この「ルルとミミ」1979年度版絵本も復刊してほしいと願う。

投稿者 YOUCHAN : 17:49 | コメント (0) | トラックバック

2005年3月30日

グリーン・ファーザー

グリーン・ファーザー―インドの砂漠を緑にかえた日本人・杉山龍丸の軌跡
杉山 満丸

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先日、お会いする機会を得た、杉山満丸さんの著作です。
このおはなしの主人公となっている満丸さんの父・杉山龍丸は、
縁があってインドの緑化に一人で(しかも本気で)取り組んだ人です。
でもって、作家・夢野久作(本名・杉山泰道)のご子息です。

久作が残した田園を売り払い、インド緑化事業につぎ込んだその経緯と、
その結果もたらされたものが描かれています。
また、その中で描かれている関係性が「インドと龍丸」だけではなく、
父と子、国と個人など、多面的に盛り込まれており、
とても興味深く面白く読めました。

現在も深刻な問題になっている、地球の砂漠化を食い止めるヒントが書かれており、
一人でも多くの人の目に触れるべき1冊だと思いました。
ルビもたくさんふってあります。
小学校高学年以上の方にオススメしたい一冊です。

投稿者 YOUCHAN : 18:28 | コメント (0) | トラックバック

2005年3月27日

man without a country

Kurt Vonnegutの新作「Man without a country」が出るそうです。
エッセイを集めたものらしいですが、筆を折ってはいなかったそう。
小説も書いているみたいですね。

わたしは、21世紀にヴォネガットが書くものを読みたいと思っていました。
その期待に応えてくれていたんだなぁと、(勝手に)喜びを噛み締めておりました。
長く生きて、様々な時代の出来事を潜り抜けてきた人の作品には深みがあり、
その移ろい全てが、ひとつの作品のようでもあります。

翻訳がはやく出ますように!

投稿者 YOUCHAN : 01:14 | コメント (0) | トラックバック

2005年3月26日

入手した本

「ご冗談でしょう、ファインマンさん」が終わったので
さらっと読める文庫を1冊…と思い、近所の書店で
山口瞳の礼儀作法入門を購入。
百間先生を読むなら、その周辺を押さえておこうと。
パラパラ拾い読みするだけで半分くらい読めてしまうライトな本。
礼儀作法入門

山口瞳を調べているうちに、非常に気になったのが「血族」。
ライトな読み口の他の作品とはガラリと異なるらしい。
んー、やっぱそっちが気になる気になる。
文庫にしようかと思ったら、古書でハードカバーで300円。
早速これを購入した。
到着した古書は、すこぶる状態のよい、美品でものすごく得した気分。
しかも装丁は田中一光。びっくり。

血族
※「血族」の装丁。函に入っている。ちなみに、文庫版はコチラのリンクから。

時を同じくして、百間「恋文・恋日記」を発見。
古書で、1,400円と非常に良心的な価格だったので、即買い。
昨日届いて早速パラパラと。あーこれはとめられない。
ということで、読みかけの「礼儀作法入門」を鞄から出し、
重たい「恋文・恋日記」を放り込んで出かけた。
明治〜大正期に、百間が妻となった清子に宛てたラブレターと
「愛する清さん」に関することだけを綴った日記。
明治の文章だから、読みにくいことこの上なし。
しかし、それを乗り越えてでも読み進めたくなる面白さ。
明治の人ってこんなにも愛情表現がストレートなの!?とビックリする。
「礼儀作法入門」は仕事机に。ちょっとの合間にパラパラと。

恋文・恋日記
※「恋文・恋日記」装丁。文庫化が待たれる。

「ファインマンさん 最後の授業」は定価で購入。ギフト券使ったけど。
現時点でほしい本は一通り揃った。あとは「ファインマンさんは超天才」を残すのみ。

投稿者 YOUCHAN : 01:02 | コメント (4) | トラックバック

2005年3月20日

ワカリクセスによって動いています

というわけで、以前多くの方から「面白いよ」とお勧めいただいた
ファインマンさんの本の中から、一番手に入りやすかった
「ご冗談でしょう、ファインマンさん」の上下巻を読了。
脳内のファインマンさん像と言うのは、
「皮肉っぽさの抜けたヴォネガット」という印象でした。
特に印象に残ったのは、やはり上巻の原爆開発のエピソードと
下巻の日本に初来日した話と、教科書の検定委員をやってるくだり。
ページをめくる手が止まらなかったです。

それにしても、あれだけ「お役所的な仕事」を嫌い、慣例をぶちこわし
いろいろ思惑が渦巻いてるのを見る限り、なんていうか、
本当は結構気難しい人だったのではないかな、と思いました。
個人的には、「ファインマンさん、最後の授業」が気になっております。

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉
リチャード P. ファインマン Richard P. Feynman 大貫 昌子
岩波書店 2000-01


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ファインマンさん 最後の授業
レナード ムロディナウ Leonard Mlodinow 安平 文子
メディアファクトリー 2003-11


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2005年2月 9日

ホワイトカラーの道楽

ホワイトカラーの道楽

21世紀は前川やくの時代だと勝手に思っておりますが、
この人の文章は非常に面白いです。天才です。
年代的にもほぼ同年代(若干彼のほうが若いな)ということもあり、
いろんな意味でストライクゾーンです。
この本は、電車に乗ってる往復で軽く読めます。
しかも、結構脳内で反芻しちゃう。面白いから、その反芻でさらに笑っちゃうし。
Webも相当天才ですが、書籍もなかなかよかったです。
願わくば、2冊目はもう少し厚めでお願いしたいところです。

「ホワイトカラーの道楽」PRページ
・前川やく「スレッジ・ハンマー・ウェブ」

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2005年2月 8日

森田たま

もめん随筆

森田たま、とは、戦前〜戦後の女流随筆家の名前です。
たいへん人気のあった作家のようで、そこまでブームになったにも関わらず、
わたしは全く彼女の名前を知りませんでした。

森田たまの処女作「もめん随筆」は、昭和11年の出版以来、
相当の増刷を重ねたそうで、そのあと出された随筆も、大ヒットしていたそうです。
(私の手元にある「もめん随筆」は15刷でした。「たま」と検印が押されていました)

私好みの古書がみつかるオヨヨ書林のメルマガに、
森田たまの本が4冊紹介されており、
簡単にネットで調べて、オヨ書で買うほうが安いということがわかり
注文して、今日到着しました。

森田たまの本の装丁は、着物がらをイメージしているそうで
届いた4冊とも、とてもチャーミングで、粋な装丁です。
出版社が彼女の著作を大事にしていることがわかります。

ちょっとつまみ読みしてみましたが、とてもよい文章を書く上質な文筆家です。
どうして埋もれてしまったのでしょう?

特集 : 随筆家・森田たまの本
オヨヨ書林

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2005年2月 6日

内田百間に思うこと

たまたま書店でみつけた文藝別冊の「内田百間」。
いろんな人の百間論は全然面白くなかったが、
興味があったのは、やはり愛娘が書いた「父・内田百間」だった。

ちくま版を読んでいるときはそんなに気にならなかったけど
時系列順に収録されている全集を読むと、次のことが気になりだした。
それは、百間の読者とは、彼の身の回りに起こったことを
知っていて当然である、ということが前提で話が進んでいる。
そのくせこの人は、その出来事をほとんど書いてはくれない。
だから、予習が必要になる。

しかしながら、研究書の類も結構出てはいるけれど、
なんだか違うような気がして、古本屋で立ち読みしては
棚に返してしまっていた。

そんな折、「父・内田百間」を読んで、
腑に落ちなかった点がやんわりと納得いくようになった。
簡単に要約してしまうと、

・自分のことが第一の人だった。
・神経質だった。うるさい環境では文章がかけない人だった。
・そのくせ、子沢山だった。
・家族を省みなかったわけではなかった。むしろ、愛していた。
・でも結果として家族を裏切った。
・後先のことをちゃんと考えられない人だった。
・一人では生きていけない人だった。

作品に関しては、おそらくフィクションとノンフィクションの境が
あいまいな人であるということも、なんとなく理解した。
百間自身は、書いたものとはすべてフィクションだったのだろう。
(日記の類は除く)

そして、これから読むのだけど「蜻蛉眠る」は、
引き算しなくてはならない。鵜呑みにしてはいけない。

などなど。

家族による「百間の生き方」の記述は、わたしの一番深い部分をえぐる。
それは裏切られた当事者の意見だからだ。
だから、わたしは「裏切った張本人」の文章を読みたいのだ。
ここ1年くらい、読み続けているのは、そのせいだ。
随筆に見せかけておきながら、突如物の怪が登場し
幕引きになる展開だって、とても納得がいくではないか。

投稿者 YOUCHAN : 13:41 | コメント (3) | トラックバック

2004年12月30日

なにが面白かった?

遅れていた案件をようやくさっきUPしました。ああもう、遅れすぎ!
厳密な締め切りがないとは言え、ちょっと遅れすぎだよなぁ。反省。
でも、とりあえず送ったのでよしとしよう。
細かい仕事が残っているけれど、あとは年明けにずれ込んでも大丈夫そう。
というより、もうクライアントが仕事納めしているので一緒なだけ。

それで、昨日の日記の続きです。
今年は例年になく本をよく読みましたが、その中でどれが面白かったかをお話します。

ノラや
ノラや

ペットロスを経験した人であれば、激しく心揺さぶられるでしょう。
ノラが失踪してからの乱れ方と、クルツがやってきてだんだん癒されてくるも、
寿命が尽きて死んでゆくクルツを取り巻く悲しみ。
喜怒哀楽が、ものすごい迫力で迫ってきます。
昭和30年代に、「家族としての猫」をまっすぐに描ききった百間先生、すばらしい。


東京焼盡
東京焼盡

東京大空襲で家を失ってしまう前夜の穏やかな日常の描写と、
焼夷弾の中逃げ惑うパニックの描写の対比がすごいです。
池澤夏樹が百間をさして「日常が生きる目的の作家」と言い表したことは
言いえて妙だと思う。この日記は傑作です。


居候匆々
居候匆々

現代仮名遣いなので、ファンの間ではとにかくちくま版は評判が悪いけど
仮名遣いに関しては仕方ないところもあるのではと思います。
(といいながら、旧漢字・旧仮名の全集を読んでるわたしですが…)
で、この「居候匆々」は、本文よりもじつは巻末の付録
谷中安規の「遺稿・かおるぶみ」が実に衝撃的です。
ささやかな幸せをより大きな幸せだと感じるアンキさんの感性は、
みずみずしいというコトバがおそらく一番当てはまる。見習うところが大きいです。
このためだけに買ってもいい一冊だと思う。
(ただし解説は駄文です。ちくま版の解説は、ハズレが多いんだよなぁ)
そして、モチロン版画もすばらしいです。
百間の本、というより、アンキさんの本といった趣。

投稿者 YOUCHAN : 04:11 | コメント (7)

2004年12月29日

百鬼園先生!

先週から今週にかけては、
忘年会に行ったりとか仕事してたりとか、
住所録のチェックをNORIちゃんに任せてたりとか
(とは言っても途中確認はしないといけない)、
クリスマスに母が来て1泊してもらってたりとか
(ディナーショーを見にやってきたのであった)、
でもまだ仕事がまだ終わってなかったりとかですけど
もういくつねるとお正月なので、ちょっとばかし今年を振り返ってみる。

今年面白かったことといえば、やはり内田百間先生との出会いである。
今野さんに長いこと借りてた「ノラや」が、引越しのタイミングで出てきて、
お返しする前に読んでおこう…と1ページ目をひらいてしまったが百年目。
こんなにはまる事になろうとは!嗚呼!!
百間先生歴まだ9ヶ月ですが、その間に読んだ百間先生は次のとおり。

・ノラや(中公)
・間抜けの実在に関する文献(ちくま集成)
・百鬼園先生言行録(ちくま集成)
・御馳走帖(中公)
・まあだかい(ちくま集成)
・冥途(ちくま集成)
・居候匆々(ちくま集成)

-このあたりでちくまの編纂方針が理解できなくなり、集成を買うのをやめようと思い立つ-

・東京焼盡(中公)
・一病息災(中公)
・阿房列車(新潮)
・第二阿房列車(新潮)
・第三阿房列車(新潮)
・日没閉門(古書/オリジナル判)

-「日没閉門」を購入した古本屋さんから、講談社の全集を勧められ購入-

・内田百間全集第1巻(講談社)
 -「冥途」「旅順入城式」「正・続百鬼園随筆」「無弦琴」収録-

それで、現在は内田百間全集第2巻(講談社)の
「鶴」「凸凹道」に差し掛かっている。
馬鹿みたいなはまり方で、われながら呆れている。

百間以外で読んだ本といえば、
谷中安規の生涯を描いた本「かぼちゃと風船画伯」、
久生十蘭の「遁走するファントマ」
読み返した夢野久作、ヴォネガット、あとは今読んでいる漱石の「猫」くらい。
…うーん、天晴れ。

投稿者 YOUCHAN : 01:59 | コメント (2)

2004年12月21日

風船画伯再風来

花のき村と盗人たち

アンキさんが挿絵を描いた、新美南吉の童話
「花のき村と盗人たち」の古本が届いた。
昭和18年のものの復刻版で、非常にお手ごろ価格であった。ラッキー。
新美南吉といえば、子供の頃からなじみが深かった。同郷であったせいだろう。
花ノ木町はわたしの郷里にもあるが、
南吉の題材にした「花のき村」は安城にあるそうだ。

アンキさんの描く「ごん狐」はかわいい。ゆえに切ない。泣けます。

投稿者 YOUCHAN : 02:29 | コメント (3)

2004年11月13日

マリー・アントワネット

Bさんがアニメ版ベルばらのおはなしを某mixiでされていて、
またもやわたしのベルばら熱が再燃しそうである。

数年前に再読したベルばら(コミックのほう)があまりにも面白くて、
その勢いでツヴァイクの「マリー・アントワネット」を読んだのを思い出した。
こっちはノンフィクション。結構ボリュームありますが、面白くてとまりません。
読みながら頭に描いてしまうのは、ベルばらのキャラクターの
アントワネットであり、フェルゼンでありルイ16世であった。

ツヴァイクの本がベルばらの下地になっているようなので、
あたりまえなのかもしれないけど、
史実とフィクションがこんなにうまく溶け合っている
ベルばらのすばらしさを再確認できる1冊…じゃない、2冊です。

ツヴァイク伝記文学コレクション (3)
ツヴァイク

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ツヴァイク伝記文学コレクション (4)
ツヴァイク


投稿者 YOUCHAN : 17:26 | コメント (1)

2004年11月10日

みすず書房

16,7年前にテグジュペリの「南方郵便機」を読んだが、あまり印象にのこらなかった。
で、長い間放っておいたテグジュペリを、大好きなみすず書房版で読むことにした。
ただし、トイレで。アンドレ・ジッドの前書きからまだ先には進めない。
ゆっくりトイレに入る時間を持つことも、重要なんだな、きっと。

夜間飛行
サン‐テグジュペリ Antoine De Saint‐Exup´ery 山崎 庸一郎
みすず書房
2001-08


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みすず書房といえば、名著「夜と霧」がある。
参考資料の付録に記載されている、戦争の蛮行にぞっとするも、
フランクル博士の手記は、どこまでも暖かい。

夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録
V.E.フランクル
みすず書房
1985-01


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