2006年7月 1日
個展の風景
先月の5月29日〜6月3日の1週間、ゑいじうさんにて開催しました個展
「文学山房」のスナップ写真です。
いただいたお花たち。いい香りをギャラリー内に振りまいてくれました。
差し入れも、お花のほかに、お菓子をいただいたり(ご馳走様でした!)、
モビルスーツのフィギュアなど。多種多様で泣けます。
階段を上がると見える風景です。ピアノがかわいいでしょ?
カウンターには、芳名帖を置かないで、貴名箱を置きました。貴名箱は手作りです。
階段には、連載『文学山房』のキャプチャーを飾りました。じっくり読んでいただいた方が多くて、嬉しかったです。
モンキーハウス〜鬼火の展示の様子です。
カウンターには本物の書籍を置きました。それ越しに百鬼園シリーズの展示が見えます。
鬼火〜パノラマ島綺譚です。お祝いにいただいた胡蝶蘭が「鬼火」に似合っているように感じました。
ピアノから壁側を向いた展示風景です。
1Fのカフェの様子です。
そしてお世話になった、「ゑいじう」さんの概観です。午前中に撮ったので、すごくピカピカ〜!
と言う感じでした!これにて、おしまいです。
長い間、お付き合いくださいましてアリガトウございました。
なお、個展に関するまとめアーカイブは「文学山房」にてまとめて(というか抜き出して)ありますので気が向いたときに覗いてやってください。
投稿者 YOUCHAN : 00:46 | コメント (2) | トラックバック
2006年6月30日
パノラマ島綺譚
※クリックすると、大きな絵がポップアップいたします。どうぞご覧ください。
二人は、一方に於いて、限りなき愛着を感じ合いながら、一方に於いては、
廣介は千代子をなきものにしようと企み、千代子は廣介に対して恐るべき疑惑を抱き、
お互にお互の気持を探り合って、でも、そうしていることが、
決して彼等に敵意を起こさせないで、不思議と甘く懐しい感じを誘うのでした。
(江戸川 乱歩「パノラマ島綺譚」より)
オリジナルイラストです。
手に手をとって不思議な島を巡るふたり。水中トンネルの外には人魚が泳ぎ、
そうかと思う内に森が開け、羊羹を切ったように完璧で美しい人工の岩肌には滝が落ち、
ドームの内側には空が描かれ、温泉には美女が…。
ここはパノラマ島。一人の男の妄想が形になった不思議な島です。
とある資産家の息子が死んだ報を受けた人見廣介は、顔が瓜二つであることと、
土葬の習慣がある事実を巧みに利用することを思いつきます。
資産家の息子の生還に大騒ぎの村、喜びに沸き返る資産家の家族。
うまうまと成りすましに成功した廣介は、資産をつぎ込んでパノラマ島の建築を決行するのでした。
ところが妻の千代子だけは、夫が偽者であることを見抜いてしまいます。
廣介も千代子に悟られたことを知り、もうこうなったら島に連れ出して
殺してしまうしかない…と決意します。千代子も不安と恐怖にかられながらも、
島に行くことを断る理由が口に出せず、結局廣介の言いなりに…。
しかし、パノラマ島を巡るうち、二人の心は次第に惹かれあってゆくのでした…。
「パノラマ島綺譚」の作者である江戸川乱歩は、この奇妙な島の描写を書く事が、
楽しくて楽しくて仕方なかったそうです。
読者であるわたしは、奇妙でグロテスクな島をめぐる冒険の中、
二人が次第に惹かれ合ってゆく様が、なんとも愛しく感じました。
破滅に向かう恋だとわかっていながら、惹かれ合わずにはいられない、人の心の不条理さ、切なさ…。
乱歩が楽しく書いたように、わたしも二人に愛情を込めて、自由に楽しく、そしてちょっぴり切なく描き上げました。
最後は壮絶な大花火で終わるこの物語。この惹かれ合う二人がどうなったのかは、
ぜひ「パノラマ島綺譚」を読んで頂きたいと思います。
ちなみに、一番右端上にいる、トレンチコートのナイフを持った男の名は北見小五郎。
明智小五郎を連想させる存在です。
(展示解説より転載)
「パノラマ島綺譚」イラストのラフです。このラフも展示しました。
書き込みが細かいので、大きな絵を用意しました。クリックでポップアップ表示します。
展示風景です。「鬼火」の隣に展示してあるのがお分かりいただけると思います。
展示のときは、このイラストは4分割されていました。出力サイズは、1/4でタテ90cm、ヨコ30cm。
相当大きなものだったのですが、4分割することで、一度に目に飛び込んでくる情報量が押さえられ、
落ち着いて見ることが出来る形態となりました。
描く時は、4分割することを前提に描いたので、ラフではその分割ラインが描かれています。
正面から見たところです。この面の真向いには、ピアノが置いてあります。
「なんちゃってカバー」です。
実は、展示会場にはなくて、後日、作品ファイルを作った際に作りました。
ということで、このパノラマ島を持って、今回の展示作品をすべてご紹介することが出来ました。
明日は、展示報告の最後ということで、展示風景の全体のスナップを
何枚かアップして締めくくりたいと思います。
光文社文庫「パノラマ島綺譚」江戸川乱歩全集第2巻に収録されています。
投稿者 YOUCHAN : 22:08 | コメント (7) | トラックバック
2006年6月28日
鬼火
そしてそれが一瞬の光芒を誇りながら、
再び闇の底に沈んで行った後には、
唯一団の青白い焔が、鬼火のように閃々と明滅しながら、
飄々として、湖水の闇の中を流れて行った。
(横溝正史「鬼火」より)
オリジナルイラストです。
横溝正史は、金田一耕助シリーズで有名な作家ですが、「鬼火」は探偵小説ではありません。
戦前の正史の作品には耽美的なものがいくつかあり、
中でもわたしはこの「鬼火」を最も愛好しています。
「鬼火」は、どこまでも憎み合った従兄弟同士の、壮絶な愛憎劇を執念深く描ききった作品です。
「鬼火」が最初に発表された雑誌は、昭和10年の「新青年」。前後編にて掲載されましたが、
その当時に掲載された挿絵は、竹中英太郎という画家によるもので、傑作と評されました。
私自身、初めてその挿絵を見たときの感動は、
「鬼火」を読んだときの衝撃に引けをとらないものでした。
わたしも描くなら「鬼火」を描いてみたい、と同時に、
竹中栄太郎に対する敬愛の気持ちも込めたいという思いが高まりました。
どのシーンを描いたらいいだろう…。悩みに悩みぬいた末、
出した結論は、ラストシーンから膨らませてみることでした。
代助と万造は、画家として成功を収めつつあった存在でしたが、
彼らは従兄弟同士で、幼い頃から憎みあっていました。
代助が画家として成功を収めようとすると、万造も画家になって代助を打ち負かそうとしました。
代助と万造は、お互いの存在がなくては生きてはいけない、愛憎表裏一体の存在だったのです。
また、この画家の間を行ったり来たりしていたお銀という女は、
得になるほうに付く計算高さを持ちながら、妖艶でつかみ所のない魅力を持っていました。
竹中英太郎が描いたお銀は、はてしなく美しく妖しい、儚げな存在でした。
わたしのイラストでも、お銀のイメージはあくまでも儚くなりました。
ところで、イラストの湖面に浮かんでいる仮面は、万造がつけていたものです。
万造は、鉄道事故に合い、大やけどを負って二目とは見られない顔になり、
仮面をつけて決して素顔を人前にさらすことはありませんでした。
底なし沼にボートを出し、代助を誘い出して殺してしまおうと襲い掛かったとき、
万造はボートから誤って落ちてしまいます。
とっさに代助は棹を万造に差し出し、助けようとします。
ところが、棹を引き上げる刹那、万造の仮面が落ちて、その素顔を代助に見られてしまいました。
代助にだけは見られたくなかった、その醜い素顔を…。
万造は、ずるずると底なし沼に沈んでいきます。
「代ちゃん……あばね!」という、郷里の別れの言葉を残して……。
その後、お銀も代助も結局沼の底に沈む運命になってしまうのですが、
沼の底で、代助と万造は、やはりいがみ合っているのでしょうか。
お互いの存在を認め合える距離にいなければ気がすまないというのに。
余談ですが、わたしはこのイラストを描く際、ムーンライダーズの「鬼火」という曲を繰り返し聴いていました。
ライダーズの「鬼火」は、ルイ・マル監督の映画『鬼火』からインスパイアされて作られた曲だと認識しています。
しかしながら、前奏や間奏の物憂いヴァイオリンのあの旋律が、
そして歌詞にも出てきた「生き損なった俺の心」等の表現が、
まさに正史版「鬼火」の世界観に合致しているような気がして仕方がないのです。
(展示解説より転載)
展示風景です。
今回の描き卸作品の中で、個人的に一番気に入っている作品が、この「鬼火」です。
手すき和紙に印刷しました。
「横溝正史のイメージで、こういうのは見たことがない」という評価が圧倒的に多かったです。
おそらく、大勢の方々の中には、角川文庫の一連の杉本画伯のイラストの
イメージが大きいのではないかと思います。
わたしが惹かれる横溝正史や夢野久作、久生十蘭らの世界とは
「血みどろの凄惨な殺人現場」ではなく、その背景にある
「人の心の闇」であり、切なさ、やりきれなさ、苦しさ、厭らしさ、そして悲しみです。
雑誌「新青年」の頃の探偵小説が特に好きなのには、そこに理由があります。
「なんちゃってカバー」です。
「鬼火」は、竹中英太郎の挿絵も全点収録されて(!)、
創元推理文庫「日本探偵小説全集(9)横溝正史集」に収録されています。
追記:竹中英太郎氏の名前を「栄太郎」と間違えておりましたので、
謹んで訂正いたしました。ご指摘ありがとうございました!>襟裳屋さま(2006.09.02)
投稿者 YOUCHAN : 13:24 | コメント (2) | トラックバック
2006年6月27日
夢野久作像(巻頭歌)
オリジナルイラストです。
「胎児よ 胎児よ なぜ踊る 母親の心がわかって 恐ろしいのか」
…これは、「ドグラ・マグラ」の冒頭を飾った歌です。
イラストの背景は、胎児の踊る羊水をイメージしました。
夢野久作ご本人は顔が長くて、頭の大きな人でした。
たいへんお洒落な人だったそうで、確かに、どの写真を見ても、
久作はモダンボーイそのものの格好をしてポーズを決めています。
また、ヘビースモーカーとしても知られており、
長ギセルをくわえている写真が有名です。
久作は夫婦仲もよく、子供ともよく遊んだ、よき夫・よき父であり、
小説に見られるような陰惨さとはかけ離れた、微笑ましいエピソードがたくさん残っています。
ただ、残された写真の久作は、寂しげな眼をしているものが多いような気がます。
気のせいかもしれませんが……。
余談ですが、この久作像が出来た後、久作のお孫さんにあたるSさんに
メール添付でイラストをお見せすると、大変気に入っていただきました。
そこで、ご自宅で飾っていただくのにちょうどよい大きさに額装して、
お送りさせていただきました。
後日、Sさんのご自宅にお邪魔させていただく機会を得ましたところ、
Sさんが代々尊敬してやまないガンジー翁の肖像とともに、
わたしの描いた久作像が飾られてあり、とてもありがたく思いました。
思い入れのある一枚だっただけに、とても嬉しく、光栄な出来事でした。
(展示解説より転載)
展示風景です。ラフスケッチも一緒に展示しました。
これが一緒に展示したラフスケッチです。
「なんちゃってカバー」です。
表題の「夢野久作 〜迷宮の住人〜 / 鶴見俊輔・著」は、
今は無きリブロポート刊の本のタイトルです。
投稿者 YOUCHAN : 22:39 | コメント (0) | トラックバック
2006年6月26日
人の顔
と言いさしてチエ子は口を噤んだ。
ビックリしたように眼を丸くして、父親の顔を見た。
しゃがんでいた父親は、いつの間にか闇の中に仁王立ちになっていた。
両手をふところに突っ込んだまま、
チエ子の顔を穴のあくほど睨みつけていた。
(夢野久作「人の顔」より)
オリジナルイラストです。
チエ子は孤児院から航海士の夫婦の家に引き取られた女の子です。
夫婦はチエ子をとても可愛がっていました。
ただ、チエ子は少々奇妙な子供で、母親と外出していると、
ふと立ち止まって「お屋根をじぃっと見ていると、人の顔が見える」
云々と話し出すようなところがありました。
久しぶりに海外から帰って来た航海士の父親と一緒に、活動を見に行った帰り。
四谷見附で電車を降りて、上機嫌で歩いていると、
チエ子がふと立ち止まって空を指して
「……あそこにお母さまの顔が……」と父親に話し出します。
どれどれ…と腰をかがめる父親。
チエ子への愛情がたっぷりで、優しさに満ち溢れています。
しかし、チエ子に見えた人の顔というのは、
母親と、父親ではない別の男の顔でした…。
夢野久作という作家は、愛情深い親子関係を、
一瞬にして木っ端微塵に砕いてしまう表現が大変うまい作家です。
イラストでは、チエ子がその情景を告げる様子を描いています。
ところで、一昨年に開催した、友永たろさんとのふたり展で出展した
「宮益坂」という作品があります。
わたしの展示作品の中では一番人気でした。
しかし、実はこの作品、もともとこの「人の顔」をモチーフにした
イメージイラストを猫に置き換えたものでした。
今回の個展で、やはり「人の顔」をちゃんと完成させておきたい!と思い、
一昨年のラフを引っ張り出してみました。…あれ? こんなだったっけ…??
ラフは私の脳内で大きく美化されていたのです。
こんなんじゃ、だめだ!!と、ひとしきり落ち込んだ後、
ラフを描き直して、完成させた作品が今回の「人の顔」というわけです。
夜に見ると、結構怖いです…。
(展示解説より転載)
展示の様子です。
なお、解説にあったラフの遍歴については、過去のエントリー
「『人の顔』遍歴」をご参照ください。
今回の展示作品は、手すき和紙に印刷しているので、
データをそのままJPEGに書き出したものとでは、やはり印象が違います。
背景は、黄色っぽいですし、なによりも、全体のトーンが
落ち着いたものとなりました。
絵としての完成は、確かに一番上にUPしているイラストなのですが、
あの手すき和紙に印刷したものが、作品としては完成形となります。
デジタルで作成しましたが、アナログの質感がどうしても必要な作品です。
この「なんちゃってカバー」も、その手すき和紙に印刷して作りました。
なんとなく雰囲気が伝わるでしょうか…。
ギャラリーではスポットライトが黄色っぽい色味のため、
写真に撮っても風合いがあまりわかりませんでした。
上図は、後日自宅にて、自然光で撮影したものです。
「人の顔」は、ちくま文庫夢野久作全集〈3〉に収録されています。
投稿者 YOUCHAN : 11:46 | コメント (0) | トラックバック
2006年6月25日
早速やってみました
一個前のエントリーで、「帯に夫人なしにしちゃえば?」という
提案があったので、早速やってみました。
これが元のカバーです。で、帯を付けてみると…
じゃじゃーん!
トレペっぽく感じますが、色を薄くした紙です。
この夫人は「ジェイルバード」のキーになる人物ですから
ネタばれ防止にもなって、いいかもしれません。
…ってなにやってるかといいますと、今、個展作品をまとめた
ファイルを作っているのです。
投稿者 YOUCHAN : 01:15 | コメント (4) | トラックバック
2006年6月23日
ジェイルバード
もし、メアリー・キャスリーンがほんとうは何者であるかをわたしが知っていたら、
彼女の両手を切り落としたがっている連中がいるという本人の話にも、
もっとなっとくがいったろう。
(「ジェイルバード」カート・ヴォネガット:著/浅倉久志:訳 より)
オリジナルイラストです。
RAMJAC(ラムジャック)コーポレーション。
この会社は、アメリカ産業界を牛耳っている大企業であり、
その大株主のジャック・グレアム夫人は、5年ほど前から表舞台から姿を消していました。
しかし、企業の買収があったとき、「あなたをRAMJACファミリーに歓迎します」と
グレアム夫人の肉筆の手紙が書かれ、署名の下には八本の指と二本の親指の指紋が押されます。
八本の指と二本の親指の指紋…。これが「本物」の証明なのです。
そして、イラスト中央に描かれたショッピングバッグレディー。
彼女の正体を明かしてしまいましょう。
彼女こそ、大財閥・RAMJACコーポレーションの大株主、
ジャック・グレアム夫人その人です。
彼女を殺し、その両腕を欲しがっている見えない敵がいる…。
世間から身を隠すため、彼女は身体に合わないほどに大きなバスケットシューズを履き、
靴の中に指紋を押すためのスタンプ台や重要書類等を押し込めて、
着られるだけのぼろを身にまとい、
ショッピングバッグレディーになって町中を逃げ回っていたのでした。
「ジェイルバード」の主人公は、ウォーターゲート事件の巻き添えを食って、
刑務所に収容されていた、ウォルター・F・スターバックです。
三年の月日を刑務所で過ごし、ようやく釈放されて
偶然出会った一人のショッピングバッグ・レディーが、かつての恋人、
メアリー・キャスリーン・オルーニーの成れの果てでした。
そして、メアリー・キャスリーンがRAMJACの大株主、
ジャック・グレアム夫人だったことは後から聞かされたのでした…。
ウォルターの回想録の形式で描かれた「ジェイルバード」で、
やはり鮮烈な印象と存在感を残したのはメアリー・キャスリーン・オルーニーでした。
大きなバスケットシューズを履いて逃げ惑うメアリー・キャスリーンを描こうと思いましたが、
それよりも、巨大なRAMJACビルや摩天楼と対比させて描く方が、
メアリー・キャスリーンを表現するにはぴったりではないか、と考えたのでした。
空には、青い空と輝く太陽。取り囲むようなビル群と、
厳しい顔をしたメアリー・キャスリーン。
そして自然を求める都会人のための公園と、
救いを求める人々のための教会を、背景に添えました。
(展示解説より転載)
展示風景です。正面一番左の、一番明るい場所に展示しました。
この絵、縦長に見えるのですが、実はそうでもなくて、ほぼ3:4の比率です。
縦にながーくそびえるビルが、縦長に見せているのですね。
なんちゃってカバー。
これに普通の帯がまきついてたら、キャスリーンが完全に隠れてしまう装丁でNGですね(汗)
海外の書籍ならいいかも。もしくは、帯なしで!
ハヤカワ文庫「ジェイルバード」カート・ヴォネガット
※「ジェイルバード」ですが、残念ながら、絶版のようです。
ただ、古書として比較的容易に入手が可能です。それにしても、悲しい、絶版…。
投稿者 YOUCHAN : 21:24 | コメント (6) | トラックバック
2006年6月22日
キャラコさん
「絹ではいかんな。木綿のような女でなくてはいかん」
剛子の一家は、父の光栄ある恩給だけでたいへんつつましく暮らしているが、
剛子がキャラコの下着(シュミーズ)をきているのは、それには関係がなく、
もっと深い感情のこもったことなのである。
(久生十蘭「キャラコさん」より)
オリジナルイラストです。
キャラコさんの本当の名前は石井剛子(つよこ)。
質実剛健の「剛」の字を取ってつけられた名前です。
「これからの女性は男の言いなりになるようなヘナヘナではいかん」
という父の願いが込められた大切な名前を、
キャラコさんはとても誇りに思っています。
また、もうひとつ「キャラコさん」という呼び名は、
剛子が質素なキャラコ(木綿)の下着をつけていたのを従姉妹たちに見られて以来、
呼ばれるようになったのでした。
従姉妹たちはシルクの下着を着けていましたから、
剛子のことをからかってこんな呼び名をつけました。
けれど、剛子はキャラコさんという名前を気に入っていたし、
周囲からもこの愛称で呼ばれるようになったのでした。
キャラコさんは19歳。誰にでもわけ隔てなく親切で、好奇心旺盛。
大きすぎる口をあけて快活に笑います。
キャラコさんに関わった人は、どんな偏屈な人だって、初めは敵意を持った人であっても、
最後にはキャラコさんが大好きになって、周囲の誰もが幸せな気持ちになってしまいます。
キャラコさんは、太陽のような暖かな女の子なのです。
「キャラコさん」が書かれたのは太平洋戦争前、昭和14年です。
大戦突入前とは言え、その当時の日本は「贅沢は敵」と国民の生活を規制しつつあった時代です。
キャラコさんの名前の由来となった「質実剛健」が、時勢に合致した思想だったことは間違いがないと思います。
娯楽的要素の強い内容のものが、当局の圧力で次々と姿を消していった「新青年」誌上で、
こんな楽しくて、豊かな思想を持った連載を、1年間も続けることの出来た久生十蘭とは、
なんという力量を持った興味深い作家でしょう。
わたしは、キャラコさんのすっくりと立つ姿を描いてみたいなと思いました。
人の幸せを願っていつも動き回っているキャラコさん。
人の悲しみを自分の痛みとして感じ取ることの出来るキャラコさん。
彼女の優しい人柄が、少しでも表現できていたらとっても嬉しいです。
(展示解説より転載)
展示風景です。ピアノの上に展示しました。
キャラコさんは快活なお嬢さんですが、久生十蘭の手にかかると
ロマンチックな雰囲気が漂います。
なので、額装展示は白い紙に、カバーはちょっと黄色っぽい手すき和紙に
印刷することで、その雰囲気を出してみました。
でも、写真ではあんまり違いがわからないですね…。
なお、「キャラコさん」が収録されている本は現段階(2006年6月)では残念ながらないようです。
三一書房版「久生十蘭全集†」に収録されており、図書館で読めると思います。
また、新たな久生十蘭の全集が発売されるという朗報があります。詳細は下記をご覧ください。
●久生十蘭オフィシャルサイト準備委員会
投稿者 YOUCHAN : 09:38 | コメント (2) | トラックバック
2006年6月21日
百鬼猫
オリジナルイラストです。
わたしは、内田百間をイメージした猫のキャラクターを描いてみました。
すると、その猫になった百間先生が…いえ、百間先生になった猫が……
とにかく、先生がわたしに声をかけてきました。
貴君、貴君…。
「何ですか、先生」
「ここは一体どこなのかね」
「市ヶ谷の隣の駅、曙橋にある、ゑいじうという画廊です」
「市ヶ谷の隣は信濃町ではなかったか」
「地下鉄が当時より増えております」
「この画廊は『ゑいじう』というのか。旧仮名遣いは健在というわけだね(※1)」
「いえ先生、残念ながら現在では旧仮名を使うことは殆どありません。現に、先生の文章も……」
「なに、新仮名遣いになっているというのか。それはいけない」
「しかし、現に大人気で読まれています」
「人気などどうでもよい。しかし、なってしまったものは仕方がない」
「しかしながら、漢字の送り仮名は先生がずっと指摘なさってた通りに戻りましたよ」
「そうだろう。僕は何度も提言をしたからね。ときに貴君」
「はい」
「画廊といったが、貴君はなにをしている」
「イラストレーター…ええと、挿絵画家をしております」
「風船画伯(※2)のようなものか」
「そんなところです。風船画伯は、21世紀になって人気が出たんですよ」
「しかし本人が生きていなければ意味がないだろう」
「それはそうですが、美術館に長蛇の列が出来たそうです」
「僕は並ぶのは好きではない。ところで、貴君は僕の文章も読まれていると言ったね」
「はい、こんな風に『内田百間集成』と言う形で、文庫として編まれています」
「こんな小さな中に詰め込まれてしまっているのかい」
「でも先生、このサイズの本は電車の中で読むのにぴったりなんです」
「貴君は列車の中で本を読むのか」
「はい」
「列車に乗るときは、外の景色を眺めるのが本当だろう(※3)」
「はあ」
「人の目は文章を読むためにあるのではない」
「でも先生の文章を読むのは、とても面白いです」
「ときに貴君」
「はあ」
「なぜ僕は猫の格好をしているのかね」
「先生は犬よりも猫のほうがお好きでしょう」
「猫が好きというわけではない。しかし、人が飼っている犬は嫌いだ」
「先生の作品では『ノラや』(※4)を初めて読んだんですよ」
「あれは校正もままならなかった」
「猫を飼ったことのある人間にとってあんなに感動する話はありません」
「人の感動などどうでもいい」
「はあ」
「なんだかとりとめのない話だね」
「麦酒でも飲まれますか」
「昼間からそんなお行儀の悪いことはしない。しかるに貴君、なぜ旧仮名遣いを使わないのかね」
「旧仮名はなんとか出せても、旧漢字が変換できないのです」
「なんだね、そのヘンカンというのは」
「……説明がたいへん面倒なのですが、よいでしょうか」
「面倒なのは駄目だよ」
「はあ」
※1 内田百間は旧仮名・旧漢字にこだわった。
戦後、仮名遣いが改められても、その方針を終生曲げることはなかった。
旧仮名・旧漢字を求めるファンは現在も多い。
※2 谷中安規。自彫自刷の版画家で、戦前の百間作品の挿画を数多く手がけた。
「風船画伯」とは、百間が安規につけたあだ名。
戦後まもなく餓死し、その急逝が惜しまれた。
※3 ただ列車に乗って目的地まで着くことだけを楽しみとし、
目的地では何の目的も持たない旅を百間は好んだ。
この旅の記録は「阿房列車」として全三巻で刊行され、人気を博した。
※4 自宅に出入りしていた猫「ノラ」が失踪して、悲しみにくれた百間の作品。
ノラを失った悲しさがあまりにも深かったため、
書いた原稿を推敲することもままならなかった。ペットロス小説としても名高い。
(展示解説より転載)
展示風景です。先日ご紹介した「件」と対で展示しました。
階段を上りきると、正面に百鬼猫先生がじっとあなたを見つめます…。
投稿者 YOUCHAN : 09:21 | コメント (2) | トラックバック
2006年6月19日
件(くだん)
こんなものに生まれて、何時迄生きてゐても仕方がないから、
三日で死ぬのは構はないけれども、預言するのは困ると思つた。
(内田百間「件」より)
オリジナルイラストです。
「件(くだん)」は大正11年に発表された、幻想味あふれる短編作品です。
そもそも件とは日本に古くから伝えられている物の怪で、その姿は頭が人で身体が牛です。
生まれて三日で不吉な預言を残して死ぬといわれていますが、
内田百間が描く「件」は、自分がどうして件になってしまったのかが理解できていません。
きょとんと戸惑っている件に対し、預言を聞こうと群がる人間たちは、
まるで好奇心の強い猿のようです。集まって、不安がって、騒ぐだけ。
その中に、こっそり百間猿が隠れています。
「阿房列車」や「百鬼園随筆」でみせる百間は、
ユーモラスな描写とわがままなのに憎めない人柄が魅力的なのですが、
創作となると、その色合いは一変します。
不気味で、取りとめがなく、話の前後関係があいまいで、心細い闇が広がっています。
創作と随筆の百間。一体どちらが本当なのだろう…。
しかし、明るく楽しい百間文学に浸っていると、
突如として闇の部分が突きつけられる事があります。
死んだはずの金貸しが訪ねてきたり(「贋作 吾輩は猫である」)、
寝台列車で休んでいると急に猿がのしかかってきて話しかけられたり(第三阿房列車)。
そんな場面に出くわすと、思わずニヤリ。
そして思うのです。
百間にとっては創作も随筆も、厳密な境目なんてないんだろうな、と。
だから百間はやめられない。
(展示解説より転載)
展示風景です。解説文と一緒に掛けてあるのが見えますか?
この文章が、上記のものです。
「冥途」のカバーという形にしています。だって「件」は「冥途」に収録されてるから。
一緒に並んでいるのは「第三阿房列車」カバーの『百鬼猫』と小川未明カバーです。
...ということで、明日は『百鬼猫』の登場です。
妄想百間先生との会話を全文掲載しますので、
「阿房列車」読者の皆様、笑ってくださいね〜。
投稿者 YOUCHAN : 23:53 | コメント (0) | トラックバック
2006年6月18日
Manyoについて
Manyoについて
『Manyo-万葉-』は感性に訴えるリコメンド型のプレミアムマガジンです。
季節を感じる食と空間、大人の着こなし、こだわりの嗜好アイテム、大切な人との旅など…
粋で上質なスタイルを提案。
不易流行をコンセプトに、日本人の遺伝子(DNA)に刷り込まれた「想い」や「憧れ」を、最新の
「食・遊・旅・モノ・ファッション」を通じて語ります。
また、『Manyo-万葉-』は雑誌のような感覚でページをめくることが出来る、次世代電子雑誌です。
閲覧には、専用ビューア「FlipViewer」をお使いのIEブラウザにインストールするだけ。
閲覧は無料で、Win/Mac共にお楽しみいただけます。
ご自宅で、職場で、大切な人と、上質な大人の時間を『Manyo-万葉-』とともにお過ごしください。
連載「文学山房」について
この『Manyo』創刊号から掲載されているYOUCHANの連載が
「文学山房 一篇の文学とイラストレーション」です。
今回の個展では、『Manyo』で掲載したイラストレーションを中心に展示しておりますが、
『Manyo』誌上では、そのほかに「併せて読みたい一冊」として、もう一冊のオススメ本を、
また「併せて聴きたい音盤」として、掲載号のテーマに合ったCDのご紹介もしています。
「次へ」ボタンをクリックすると、右側のテキストエリアが
さっとスクロールして切り替わる仕組みになっています。
また、イラストのイメージに合ったBGMも流れます。
「文学山房」は、見て、読んで、聴いて楽しいコンテンツです。
(以上、展示パネルより転載)
投稿者 YOUCHAN : 00:38 | コメント (0) | トラックバック
2006年6月17日
月と菓子パン
ぽってりとした夜中の満月は、菓子パンのなかのクリームの
練り上げたような黄色をしていると思った。
(石田 千「月と菓子パン」より)
Manyo 2006年7月号に掲載されています。ぜひご覧ください。
階段を上がってすぐ眼に入るのが、壁際のピアノの上の展示です。
意識して、ここには明るい色彩の絵を並べました。楽しい感じです。
サイドから見ると、本のカバーの背の所に、クリームパンを食べているおじさんが
くるようにしたんですけど、見えますか?
なんちゃってカバー・「月と菓子パン」の巻。
「月と菓子パン」の作者の石田 千(せん)さんは、わたしと同い年です。
とても丁寧な日本語を書く方で、個人的に(一方的に)とても親近感を持っています。
Amazonの書評等を見ると、「豆腐屋」「本屋」「花屋」という言い回しに嫌悪する人も。
ですが、却ってそこが対象との距離をきちんと保っているように見えて、
わたしは個人的には好感を持っています。入り込みすぎてない感じっていうのかな。
晶文社 「月と菓子パン」 石田 千
追記:石田千さんの元クラスメイトさんからコメントをいただきましたが、
こちらのふてぎわでTBができないようになっておりました。
ので、こちらからTBさせていただきました。
こういうご縁って嬉しいですねぇ~。
かつきさん、改めましてコメントありがとうございました。(2006/08/07記)
・猛読酔書『月と菓子パン』石田千
投稿者 YOUCHAN : 23:53 | コメント (2) | トラックバック
2006年6月16日
センセイの鞄
ツキコさんこそ、あのときの男子とどこかに行ったんですか。
センセイが聞き返した。え?とこんどは私が首をかしげる。
(川上 弘美「センセイの鞄」より)
Manyo 2006年6月号に掲載されています。ぜひご覧ください。
展示風景です。このイラストも、1Fのカフェに展示していました。
Manyoで連載した作品の多くが1Fに展示されてました。実は。
センセイは、このくらいのおじいちゃんじゃないかなーと、わたしは思っていました。
ツキコさんは、もうちょっと大人っぽくてもよかったかな。
「恩師と教え子」以上「恋人」未満…の、もどかしい時期を絵にしました。
ところで、この本の作家の川上先生は、百間先生ファンなんですよ。
なんだかそういう偶然って、嬉しくないですか。ねぇ。
平凡社 「センセイの鞄」 川上 弘美
※それで、改めて説明いたしますと、最近、連続で投稿している
イラストレーションのエントリーは、去る5月29日〜6月3日に
ゑいじうにて開催された個展「文学山房」の出展作品および展示風景、
そしてモチーフとなった小説が収録されている
本のご紹介、となっております。一日に1点ずつUPしてます。
(日曜日はお休みします)
投稿者 YOUCHAN : 23:45 | コメント (0) | トラックバック
2006年6月15日
さくら
もっともっと多く見るような気がするのは
祖先の視覚も
まぎれこみ重なりあい霞だつせいでしょう
(茨木 のり子「さくら」より)
Manyo 2006年5月号に掲載。バックナンバーよりご覧ください。
展示風景です。1Fカフェの一番奥の壁にかけてありました。
このイラストを描いたのは、まさに茨木さんの訃報が飛び込んできた直後のことでした。
ちょうど、掲載時期が桜の季節だったので、5月号はこれでいこうと
思っていた矢先のこと。
個人的に追悼の気持ちを込めて描きました。
連載文中に追悼の文字はありません。あくまでも、個人的に。
茨木さんにとって「わたしが一番きれいだったとき」に
「さくら」をうっとりとみれたらステキだったろうな、
きっと、こんなきれいな色の着物を着たかったろうな、
等などといろんな気持ちを込めて、絵に託しました。
謹んで茨木先生のご冥福をお祈りいたします。
童話屋「おんなのことば」(茨木 のり子:著)に収録されています。
投稿者 YOUCHAN : 22:42 | コメント (0) | トラックバック
2006年6月14日
往復書簡
たくさんの年を重ねる必要はない、
物語を書きはじめればいい、書かなくてはならないから
書くのです。
(トーベ・ヤンソン「往復書簡」より)
Manyo 2006年4月号に掲載。バックナンバーよりご覧ください。
展示風景です。この作品も、1Fのカフェに飾っていました。
ヤンソンといえばムーミンですが、このシリーズにはムーミンは出てきません。
「往復書簡」は、「読者は作家の書いた本の中でのみ作家と出会い、
そして共に旅が出来る」といったような内容で、
ヤンソンと日本人少女の読者との手紙のやりとりの形式をとっています。
でも、そこにヤンソンからの手紙は書かれていません。
なんちゃってカバー トーベ・ヤンソンの巻。
みすず書房風レイアウト。もっと余白があってもよかったかな。
実物のヤンソンの本は、本体が濃い色で透けてしまったため、紙を2重に巻きました。
筑摩書房 トーベ・ヤンソンコレクション1「軽い手荷物の旅」
(トーベ ヤンソン:著/冨原 眞弓:訳)に収録されています。
投稿者 YOUCHAN : 20:16 | コメント (2) | トラックバック
2006年6月13日
月夜と眼鏡
月の光は、うす青く、この世界を照らしていました。
なまあたたかな水の中に、木立も、家も、丘も、
みんな浸されたようであります。
(小川未明「月夜と眼鏡」より)
Manyo 2006年3月号に掲載。バックナンバーよりご覧ください。
展示風景。1Fカフェ入り口すぐの壁にかけてありました。
半切サイズですが、壁が広いので、絵が小さく見えますね。
なんちゃってカバー・小川未明の巻。
今回の展示のもうひとつの目玉、それは「なんちゃってカバー」です。
未明は童話なので、おおきな版形が合うと思いました。
ちなみに、中身はわたしが出した中央出版の絵本です。
こんな感じでカウンターに並べました。
未明の右隣にあるのは、実際に私が出版した絵本と、
わたしが自宅から持ってきた、十蘭と久作と百間の全集から1冊づつと
乱歩の文庫の本物です。
「なんちゃってカバー」と本物が混在していたのはこのカウンターだけで、
あとは全部「なんちゃってカバー」です。売られているわけではありません。
もし混乱した方がいたら、ゴメンナサーイ。
新潮文庫「小川未明童話集」に収録されています。
投稿者 YOUCHAN : 14:33 | コメント (0) | トラックバック
2006年6月12日
北溟
岸にはさっきから吹き寄せた雲だか綿だか解らない物が
段段積み重なって、その中から色色の大きさの
膃肭獣(おっとせい)がのぞいたり隠れたりしている。
(内田百間「北溟」より)
Manyo 2006年2月号に掲載。バックナンバーよりご覧ください。
「北溟(ほくめい)」は、1Fカフェに展示していました。
ポストカード販売もしましたので、2Fでカードを見て、
改めて1Fの展示も見てくださった方もいらっしゃいました。
膃肭獣を拾ってすすると葡萄のような味がした…というお話です。
この不条理さと、あどけない膃肭獣のギャップがなんとも言えません。
引き気味に撮ってみますとこんな感じです。明るい店内に映えますね。
ちくま文庫「内田百間集成(3)冥途」に収録されています。
投稿者 YOUCHAN : 22:22 | コメント (0) | トラックバック
2006年6月10日
雪のひとひら
それらはいずれもいかにも広大に見えながら、
ひとたびかの巨大な太陽や、月影や満天の星に思いをいたせば、
まことに取るに足らないささやかさでした。
(ポール・ギャリコ「雪のひとひら」より)
Manyo 2006年1月号に掲載。バックナンバーよりご覧ください。
階段の下の壁に展示しました。
階段を上るときにご覧頂く方と、2階の展示室を見終わってから
帰りしなにご覧頂いた方といらっしゃったように思います。
2階から見た感じです。
ちなみに、右の壁に段段にかかっているカラフルな額は、
Manyoでの連載の画面キャプチャーを
第一回目から最新号まで額装したものです。
新潮社 「雪のひとひら」 ポール ギャリコ:著/ 矢川 澄子:訳
投稿者 YOUCHAN : 13:00 | コメント (6) | トラックバック
2006年6月 9日
家守綺譚
まるで夕闇から滲んで出てきたかのように、
周囲との境がはっきりしなかったのだが、微動だにしない、
その地蔵のような気配に、妙に引き付けられた。
(梨木 香歩「家守綺譚」より)
Manyo 2005年12月号に掲載。(この回より、「文学山房」として連載が独立しました)
バックナンバーよりご覧ください。
展示風景。ピアノの上に飾っています。隣は石田千さんの「月と菓子パン」。
実はこの絵だけ、諸事情で他の作品より解像度が低いため、小さいのです。
「こんな小さな絵だったんですか!?」と何人かの方に驚かれました。
ゑいじう入り口のウェルカムボードは、
DMを拡大して印刷したものです。A3サイズ。
うっかりしていて、このイラストが掲載されたBallistic社の本「Painter」を
ギャラリーに持っていったのは最終日でした。
ご覧いただけた方は少なかったですね…スミマセンでした。
新潮社 「家守綺譚(いえもり きたん)」 梨木 香歩
投稿者 YOUCHAN : 16:25 | コメント (0) | トラックバック
2006年6月 8日
夢十夜
今日から一日に一点ずつ、個展での展示作品をご紹介していきます。
トップバッターは、「Manyo」創刊号に掲載された、この作品から。
赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、
------あなた、待っていられますか
(夏目 漱石 「夢十夜」より)
Manyo創刊号に掲載されています。(第一回目のみ、「二人のエンタテインメント」内)
バックナンバーよりご覧ください。
展示風景。入り口から入ってすぐ。カウンター横。
岩波文庫 「夢十夜 他二篇」 (夏目 漱石)に収録。
投稿者 YOUCHAN : 13:51 | コメント (2) | トラックバック
2006年6月 5日
happy ending!
「鬼火」作品の前で。(photo by nori)
無事に1週間の個展が終了しました。
さまざまな出会いや再会がありました。実り多き展示となり、安堵しています。
と同時に、この個展で「撒いた種」に水をやり、丁寧に育んでゆくことを
怠らないようにしなくては…と気持ちを新たにしている所です。
個展は終わりましたが、まだまだ続いている感じがあります。
さまざまな面でサポートしてくださったManyo編集部 F戸さん、PCM竹尾 O槻さん、
ご来場くださったみなさま、行けなかったけど応援してくださったみなさま、
ゑいじうのマスター&ママ、NORIちゃん…
本当にありがとうございました。
今後ですが、展示作品につきましては、日を追って少しずつ当BlogにてUPしてゆきます。
「モチーフとなった文学作品を読んでみたくなった」という感想も多く聞かれましたので、
該当する文学作品の収録されている本も併せてご紹介していこうと思います。
ゆっくりやりますので、のんびりとしばらくお付き合いください。
まずはお礼とご報告まで。ありがとうございました。
「パノラマ島綺譚」の作品の前で。(photo by 岩崎さん)
ゑいじうにて。展示の模様(一部)
投稿者 YOUCHAN : 00:32 | コメント (10) | トラックバック
2006年6月 1日
あと二日です
早いような長いような。
展示もあと二日となりました。
いろんな人とあってお話しすると、ホントいろいろ勉強になります。
明日はどっちへ行こうか…ずっと先を歩いている人でさえ、
前を向いてそのことを考えている姿を見ると
背筋がしゃんと伸びる気持ちです。
気の置けないe-spaceの皆さん、可愛がってくださる諸先輩方、
いろんなところで顔をあわせるけど、ちゃんと話すのが初めてな人、
はじめまして!の挨拶が嬉しい方、お仕事関係の方、
お仕事じゃない所でつながってる方、遠方からはるばるやってきた方、
ふらりと立ち寄ってくださった偶然の賜物な方…
みなさん、ありがとうございます。
あと二日です。
暑い毎日ですが、ぜひお運びください。
お花もきれいに咲いてますよ。ありんこも這ってますが。
投稿者 YOUCHAN : 23:54 | コメント (5) | トラックバック
2006年5月31日
ザクの差し入れ
個展にお運びいただいて、お顔を拝見するだけで嬉しいし、
作品を見てもらうだけで勇気凛々なのです。
が、中には、お土産を差し入れてくださる方もいらっしゃいまして、
わたし的にはありがたく頂戴しております。
が。
今日(30日)に来てくださった林さんの差し入れは一味違いました。
それはコレです。
シャア専用ではなく、量産タイプにしたのは、もし仮に
トゴルにザクがあっても、量産型なら困らないだろう、という
理由からだそうです。
グッジョブ、林さん!
つーか、女子の展覧会の差し入れではありえないセレクションです。
会場に飾っておきたい衝動に駆られましたが、
おうちのズゴックさんも待ってることですし、
おうちに持って帰りました。(組み立て係はNORIちゃん)
投稿者 YOUCHAN : 00:18 | コメント (3) | トラックバック
2006年5月29日
展示がはじまりました!!
先週の土曜日(5/27)は、大雨の中、搬入に行って来ました。
搬入は、NORIちゃんが大変なコンディションのなか、車を出してくれました。
ほとんど寝ずに準備しての搬入だったので、帰路に着いたとたん、
あっという間に乗り物酔いに…。
5/29の月曜日から個展が始まりました!
展示が完全に終わっていなかったので、朝一で残った分の設営をすませて、なんとか形に。
これを通称「あとのせサクサク」と呼んでます。
(ダウンタウンの松っちゃんがリンカーンで使っていた)
オープニングは大盛り上がりでした。
e-spaceのみなさん、いつも来てくださるお友達の皆さん、
今日はじめて運んでくださった方々、本当にありがとうございます。
そして、お手紙を出した、ある出版社の方が来てくださったのに足が震えました…。
いろいろお話をさせていただけて、じっくり作品を見ていただけました。
ダメモトでお手紙を出してよかった…。読んでいただけたんだー!と感動しました。
そして、お開きの時間。
最後の最後まで2Fの展示室に残っていた方と記念撮影。
先に帰っていただいた1Fで盛り上がってくれた皆さんも、お忙しい中、お疲れ様でした。
ありがとうございました。
展示は6月3日まで続きます。
毎日ギャラリーにはおりますので、近郊の方はぜひ遊びにいらしてくださいね!
※展示作品の詳細写真は、展示終了後にUPしますので、お楽しみに〜。
投稿者 YOUCHAN : 23:59 | コメント (8) | トラックバック
2006年5月20日
「人の顔」遍歴
一昨年に開催した、友永たろさんとのふたり展で出展した
「宮益坂」という作品があります。
コレなんですが、わたしの展示作品の中では一番人気でした。
ですが、実はこの作品は、もともとは、夢野久作の「人の顔」を
モチーフにしたイメージイラストを猫に置き換えたものなんです。
今回の個展で、やはり「人の顔」をちゃんと完成させておきたい!と思いまして
一昨年のラフを引っ張り出してみました。
…あれ? こんなだっけ…??
ラフは私の脳内で大きく美化されていたのです。
こんなんじゃ、だめじゃん!!!とひとしきり落ち込んだ後、
描き直したラフはコチラです。
これがどんな風に仕上がったかは、ぜひ会場でご覧ください!
会場にこれない方は、展示終了後にWEBにて公開いたします。
ただ、今回、このイラストと「鬼火」は、
楮(こうぞ)という和紙ベースの紙に印刷しています。
この紙は、ペーパーショウでPCM竹尾さんが発表されていまして
その色あいにクラクラと一目ぼれ。
絶対何点かの作品は楮で刷るぞ!と心に決めていました。
そのため、PCで見るのと楮に印刷したのとでは
全然イメージが違います。
狙ったとおりの効果がでました。
が。
このイラストの雰囲気で…というお仕事の依頼が、もしも来たときは
出力したものをアナログ入稿するか、
それとも印刷物の用紙を楮のような紙にしてもらうしかないじゃん。
はた、と気が付きました。
紙は出力の命ですねぇ。
それにしても、想像以上の刷り上りに、ため息です。
投稿者 YOUCHAN : 17:39 | コメント (4) | トラックバック
2006年5月17日
パーティーなどのこと
今日、ゑいじうさんに伺って、初日のオープニングパーティーのこととか
展示期間中のこととか、いろいろ打ち合わせてきました。
ゑいじうさんは、行った事のある人はご存知だと思いますが
1階部分がカフェで、2階が展示室となっています。
そこで!
初日(5/29 17:00〜19:00)のオープニングパーティーは、
飲食については1階で行います。
2階への食べ物&飲み物の持ち込みは無しということで。
2階でゆっくり作品を鑑賞していただいたら、1階に下りてきていただいて、
みんなで楽しくわいわい♪やりましょう。
お料理もお願いしておきました。
ゑいじうさんのお料理はとっても美味しいので、楽しみです。
ビール、ジュースなどをご用意いたしますので、お気軽にご来場ください。
パーティー会場に見知らぬ人がいたら、どうぞその場で名刺交換してください。
わたしも、できる限り橋渡しをします。それで、みんなで楽しく歓談しましょう。
知り合いが増えて楽しかった〜、と思ってもらえて
作品もちゃんと見れてよかった〜と思ってもらえるような個展にしたいと
思っております。よろしくです!
それから、展示期間中は、お茶などのお飲み物は
わたしのほうからはお出しいたしません。
お茶を出してもらって、ありがたい場合もありますが、
結構お腹一杯なのに入れてもらった以上は飲まざるを得ない
といった状況とかのほうが多いような気がしました。
また、紙コップなどのゴミがすごいことになり、それは避けたいな、と。
喉が渇いた方は、ぜひ1階のカフェで美味しいお飲み物をお召し上がりください。
リーズナブルなのに、すごく美味しいコーヒーはオススメです。
あっ、でも別に飲み物を飲まなくても、
展示室の方へはいつでも自由にお入りいただけますので
ドリンクチャージとかはありません。
そのあたりもご安心ください。入場無料です。
喉が渇いたら、1階のカフェの方をご利用ください!
あと、芳名帖の設置もしない予定です。
貴名箱をご用意いたしますので、お名刺を入れていただくか、
備え付けの名刺大の用紙にお名前などを記入して入れてください。
一応、個人情報保護の立場で…ということもありますが、それ以上に
芳名帖の場所で渋滞が起きることを避けたいなと思ったからです。
BGMは「Manyo」の「文学山房」でご紹介したCDを中心に
かけてもらいますので、そちらもお楽しみに!!
投稿者 YOUCHAN : 19:59 | コメント (0) | トラックバック
2006年5月12日
紹介いただきました
DMですが、ギャラリー犀さんにひきつづき
銀座ふそうギャラリーさんでも置いていただくことになりました。
快諾していただき、ありがとうございました>金田さん
それから、作画には欠かせないタブレットのWACOMさんの
サイトのニュースフラッシュに掲載していただきました。
WACOMさん、ご紹介ありがとうございました。
いろんな方のご協力をいただけて、幸せです。
がんばって制作を進めなくては。あと2週間です。
関係ありませんが、ウチのネコのサービスショットです。
なにを相談しているのかにゃ〜。
投稿者 YOUCHAN : 21:14 | コメント (4) | トラックバック
2006年5月 9日
DMはこんなです
そういえば、全体像をちゃんと掲載してなかったことに気が付きました。
こんなDMです。三鷹のギャラリー犀さんでもハガキを置いていただけることになりました。
斉藤さん、快諾してくださってアリガトウございます!
見かけたら、手にとってください。よろしくお願いします。
投稿者 YOUCHAN : 11:10 | コメント (2) | トラックバック
2006年5月 6日
できたこととできなかったこと
Manyo6月号が更新されました。
今月の文学山房は、かの川上弘美さんの名作「センセイの鞄」です。
画像は、一部だけお見せします。
ゑいじうでも展示しますので、ゆっくりご覧ください。
連休中は、大作「パノラマ島綺譚」をようやく完成させました。
4連作です。おそらく、今回の展示の目玉となる作品のはずです。
連休明けに出力に出せます。遅くなっちゃったなぁ…。
そして、引き続き「鬼火」のラフをやりましたが、これが進みませんでした。
煮詰まって煮詰まって、もうだめだったので、
その日は泣く泣くあきらめました。
「鬼火」は、横溝正史の最高傑作だとわたしは思っています。
その気負いがありすぎるせいかもしれませんし、
あの竹中栄太郎のすばらしい挿絵を見てしまったことも
大きなプレッシャーなのかもしれません。
ですが、わたしなりの「鬼火」のラフが、なんとかできました。
ちなみに、この絵を描いたときに、繰り返し聴いたのは
ムーンライダーズの「鬼火」でした。
ライダーズの「鬼火」は、ヌーベルヴァーグの方であって、
横溝の方ではないはずですが、
生き損なった俺の心 とか
古い夢の中に 汚点(しみ)を残して…といったフレーズや
前奏や間奏で流れる、物憂いような、凄みを感じさせるあの旋律が
横溝の「鬼火」の世界観に通じるものがあるように思いました。
ラフは出来た。けれど、どんな作品になるかは、神のみぞ知る…。
私なりの「鬼火」、どうかどうか描ききれますように。
祈る気持ちです。
投稿者 YOUCHAN : 20:44 | コメント (2) | トラックバック
2006年5月 1日
パノラマ島綺譚
………終わりません。
「パノラマ島綺譚」の絵に取り掛かり始めて、10日以上経っている気がします。
今回の出展作品の中で、一番大きな絵とは言え、時間がかかりすぎています。
誰がこのラフ描いたんだと文句を言いたくても…それは自分です。
今日くらいにはできるかなぁ。細かいよぅ、描きこみが…。
…やりすぎだ。
この作品は4000PXでは出せないサイズなので、
外に出力に出すのです。なんとしても完成させたい。
ホントは連休前に完成予定だったのにぃ……。
今、事情があって、朝方生活です。
今日は7時半におきて、プラゴミを出してそのままお散歩。
お正月にお札を貰った氏神様の祭ってある神社まで
20分くらいてくてく歩いて、お参りしました。
その帰り、道を替えてみようと思ったのが大間違いで、
…若干迷いました。土地勘がまだ全然ありません。
(引っ越してきて、まだ2年)
結局、1時間、朝食前にウォーキングです。
ちょっと疲れたけど、なんだかいいかも!
毎朝、歩こうかな〜。神社って気持ちいいですし。
さー、これから洗濯物干したら、またパノラマ描くっす。うおー!
(ホントは今日出力に出したい……無理か。ムリそうだな…)
投稿者 YOUCHAN : 09:42 | コメント (3) | トラックバック
2006年4月22日
個展のテーマ
今回の個展のモチーフは、文学作品です。
基本的にはわたしがチョイスした古今東西の文学作品を
自分なりに消化して、イラストレーションにして表現したものが
今回の『文学山房』の展示テーマとなります。
Manyo(万葉)誌上で連載したものが中心となりますが
どうしても誌面の性質上、テーマ性がそぐわない文学については
描きおろしで発表します。
DMの表面には、今回のモチーフとなる予定の作品の
一覧が書かれていまして、以下の通りとなります。
わたしのイラストレーションは、色使いがキレイで明るい部類だと思います。
そんなわたしが惹かれてやまないのは、文学の影や闇の部分です。
なにごとにおいても、陰と陽の側面があってこそ成り立つのではと、
個展では、影の部分もきちんと前に出していくつもりです。
テーマも、手法も、一本に絞っていく分、
陰と陽への振れ幅が取れればいいなと感じています。
ここにリストし切れなかった大好きな作家もたくさんいます。
第一、足穂がいない、虫太郎もいない。ブラッドベリもバーコヴィチもいない…。
描きおろしは、できれば、もっと描きたいのです。
が、ギャラリーのキャパ的にも、あとわたしの力量的にも不安があるので、
まずはDMに明記した分はちゃんと出せるようにしたいと思います。
投稿者 YOUCHAN : 13:51 | コメント (5) | トラックバック
2006年4月19日
DMのデザイン
これがDMの全貌です。
表面は、文庫本をイメージしたデザインです。
帯が巻き付いてて、キャッチコピーが入ってるみたいな。
でも、厚みが無いと全然文庫に見えないですね。
今回の展示は、Manyoで連載しているイラストを中心に、
描き起こしもプラスしての内容ということになります。
描き起こし作品は、ちょっと濃い目(?)の作品がラインナップされてます。
宛名面は、会期と地図などです。下記がそれですが、
協賛にPCM竹尾さんが、後援にManyoさんが加わってくださいました。
※上記画像をクリックすると、大きな画像がPOPアップ表示します。
本が好きで、その思いを絵に託しました。
いろんな作品があります。