2013年2月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2424ページ
ナイス数:18ナイス
UNDER GROUND MARKETの感想
現代から数年未来の話。テクノロジーは現代と地続きだが、大きく変化している「地下経済」の描写は、ちょっとぞっとするほどリアリティがある。3人の若者(とくに恵)のハツラツさに清涼感を感じて、救われるような気持ち。「老害」とならないようにしなくてはね、私達バブル世代は。
読了日:2月1日 著者:藤井 太洋
Kurt Vonnegut: Lettersの感想
ヴォネガットが逝去してもう6年になるけれど、40年台から順番に遡ることで、一人の偉大な作家の足跡をたどっていったような印象を受けた。ぷつりと途絶えたように見える手紙は、死そのものを表しているようだった。そして続くヴォネガットの写真の数々を繰るうちに、この本を編んだウェイクフィールドのヴォネガット愛が伝わってくるような気がした。素晴らしい本です。
40年台から没年までのカートからの手紙を年代ごとに収録。例外は、2通目に収録した叔父アレックスの手紙。帰国したカートをアリスとともに迎えに行ったアレックスによる、甥の描写が生々しい。50年代は金策の時代。就職、転職を繰り返し、短篇を書きながら家族を支えた。60年台も金策に追われるが、65年にアイオワ大学から講師として呼ばれることが転機となる。もう一つの転機は『スローターハウス5』のヒットにより、作家として認められるようになったこと。しかしながら、結婚生活は破綻して、『さよならハッピー・バースデー』の上演直後にニューヨークに単身移転してしまう。70年台は、セパレートした家族(特に末娘ナニー)との手紙が多く、父親としての苦しい胸の内が明らかになる。が、70年代後半は精神的にも安定した充実の時期となる。80年代は制作意欲が旺盛で、後期ヴォネガットの長篇が一気に生まれる。90年台はジル・クレメンツとの不和が明確となり、ニューヨークとサガポナックを行ったり来たりしている。そしてとうとう2000年代、火事を起こして一命を取り留める波乱の幕開けのあと、比較的穏やかな時を過ごしていたようだけれど、ぷつりと手紙は終わってしまう。転倒事故だったから。 40年台から2000年代の間に、ヴォネガットの身に起きた変化のみならず、時代そのものも変化していく。「自分はコンピューターを持たないから見ることは出来ないけど」と断りながら、Vonnegut.comのURLを教える手紙の内容には感銘を受ける。「Player Pianoは失敗だった」と、未来の予見がいかに難しいかを記したことも。 交友関係で印象的だったのは、99年にシオドア・スタージョンの娘が、『孤独の円盤』の序文をカートに依頼する手紙で、彼女の父親とトラウトとの関係を尋ねたもの。カートは「まさにそうだよ」と認めた上で、テッドと呼び、思い出を綴った手紙は一ファンとして嬉しかった。
読了日:2月5日 著者:Kurt Vonnegut
〈ブラック・ローズ〉の帰還の感想
冒険活劇な展開が楽しい。最初はフーダニットものかしらんとか思ったけど、中盤からそんなのどうでもよくなってあとは手に汗握る展開に。太陽神ラーみたいなフリークスの凶暴っぷりに萌えた。
読了日:2月7日 著者:伊東麻紀
孤島の鬼の感想
ポー『モルグ街』の密室殺人を下敷にしつつも、異形趣味炸裂であった。グロ表現がない分、とても読みやすい。とっちらかり気味というか、あらゆる乱歩的なモチーフがぎゅう詰めになってる印象なのは、雑誌連載という趣旨故か。竹中英太郎によるカットと扉絵がより一層大正的なムードをもりあげる。偉大なるB級小説。
読了日:2月8日 著者:江戸川 乱歩
ヒトデの星の感想
生命の始まりと終わりをヒトデナシに投影したような、そんな印象。ささやかな暮らしの愛おしさがここにも溢れていて泣ける。ちらりちらりとムーンライダーズの歌詞をモチーフにした描写が(ほんとにかすかだけど)、あちこちに散りばめられていることも見逃せなかった駄目な僕。
読了日:2月11日 著者:北野 勇作
時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1)の感想
読み終わったし面白かったんだけど、薔薇戦争の背景と人物相関図が理解できてないので、ちんぷんかんぷんすぎる。速攻で二巡目。
読了日:2月16日 著者:ジョセフィン ・テイ,小泉 喜美子
時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1)
2巡目終了。じっくり理解しながら読むことが出来て、楽しさも倍増。トニイパンディていっぱいあるよねと思った(吉良上野介とかいい例じゃないか)。謎解きの妙を味わい傍ら、マータとキャラダイン、〈ちびすけ〉と〈アマゾン〉との掛け合いもとても楽しめた。そして何より、これが60年前に書かれた小説とは思えないほど瑞々しかった。
読了日:2月22日 著者:ジョセフィン ・テイ,小泉 喜美子
真説 金田一耕助 (角川文庫)の感想
角川春樹をハリキリ社長と呼んで、絶大な信頼を置く。映画の成功にそわそわワクワクする。若いファンに支持されていることを心から喜ぶ。そんな横溝正史の素直な感性が瑞々しい。『病院坂の首縊りの家』で、還暦を迎えた金田一耕助をアメリカに追放して「最後の事件」とした。このことを作家本人が一番寂しがっているのがいい。ここまで愛情を持って描かれた作品群だからこそ、横溝正史は今なお愛され続けているんじゃないかなと、改めて思った。
読了日:2月23日 著者:横溝 正史
金田一耕助のモノローグ (角川文庫)の感想
横溝正史が岡山に疎開した3年6ヶ月を綴った思い出の記。「作家はつねに超然として、周囲から孤立しているのがいちばん好いのではないか」という一文が心に沁みる。村民との交流を大切にしつつ、東京の文壇にも思いを馳せる。人との交流と孤立のバランスが実に良く、精神的に健やかな作家像が浮き彫りとなる。装画は『本陣』を軸にしているあたり、流石の杉本一文である。が、タイトルがミスリードしているのはどうしたものか。『楽しかりし桜の日々』とつけるところであろう。NHKあたりが昼の連続TV小説にしたらいいと思う。
読了日:2月24日 著者:横溝 正史
青い脂の感想
好きか嫌いかといえば、かなり嫌い。しかし、凄いかどうかといえば、相当凄いと思う。『家畜人ヤプー』以来の厭凄い本だった。リプス・老外!
読了日:2月26日 著者:ウラジーミル・ソローキン
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