方丈記
ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
よどみに浮ぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、
久しくとゞまりたるためしなし。
世中にある、人と栖と、又かくのごとし。
今朝、田中さんの告別式だった。
お坊さんの読経は、そんな引用からはじまった。
悲しかった。けれど、よいお式だったと思う。
改めて、ご冥福を。
悲しいんだけど、おかしいこともあったのだ。
早めに式場に着いたわたしとNORIちゃんは、入り口の外でまっていた。
そしたら、須田のおっちゃんと奥さまが私達を見つけて
「せっかくだから、お顔見ていく?」と、中に誘い入れてくださった。
会場には、ご親戚・ご親類の方ばかりだったので、
田中さんのお顔を見たら外に戻るつもりだった。
田中さんは、2月にお会いしたときよりもずっとずっと痩せていた。
笑顔のような表情だったのが、ちょっと救いだったかな。
須田さんが、田中さんの奥様を紹介してくださった。
今日、NORIちゃんが以前撮影していた田中さんの写真を
大きくプリントしたものを持ってきていたので、
NORIちゃんが奥様に手渡した。
オカリナを演奏している写真がなかったから、と
親戚の皆さんもとても喜んでくださって、ほんとよかったね。と思っていた。
そしたら、「そろそろお時間なのでお席に着いてください」
とアナウンスが。
「YOUCHANたち、こっちこっち!」と、須田のおっちゃんが手招きするまま
こんな前に座っていいんですか? いや、いいんだよ。さぁさぁ。
わたちたちは、祭壇に近い場所に座ることになった。
それにしても、焼香の人、少ないなぁ。平日の朝だからかなぁ…。
とおもっていると、黒いリボンが回ってきた。
「…?」
お坊さんがやってきて、読経が始まった。
途中で、焼香の方が、外からたくさん入ってきた。
…おっ。おっちゃん〜〜!ここ、親族席じゃん!?
帰宅して、NORIちゃんが云った。
「あれは、須田さんじゃなくて、田中さんが仕向けたんだよ」
手をたたいて笑って指差す田中さんが浮かんだ。
もしかしたらそうなのかも。