アナログとデジタル

作品を展示していると「手描きですか?」と尋ねられて
お返事に窮することがあります。

お尋ねの意図がデジタルなのかアナログなのか、ということだとは思うのですが、
ペンタブレットとPainterを使って描いている以上、
これらの作品は手描きなので、そのようにお答えします。
デジタル=正確・硬質なイメージをお持ちの方が多いようで、
そのように伝えますと驚かれます。
驚いていただくことは楽しいし、お褒めのコトバも素直に嬉しいですが、
実の所、わたしは手法にこだわりは持っておりません。

イラストレーターという職種である以上、データ入稿は当然ですし、
(それでも10年くらい前、デジタル入稿が受け付けられず
出力したものを入稿したことがありました)
CMYKデータの段階で、自分の意図した色になっているよう管理して
納品することが重要だと思っています。

その過程で、アナログな作業を経たものであろうと、
モニター上で全てが完結していようと、そこに価値はなくて、
逆にブラックボックスでよいのではないかなぁと思っています。

先日上梓した「こんなサイトはいかがでしょう」は
アナログとデジタルが混ざっています。
線画はトレペにペンで描いていまして、
トレペを使っているのは、ラフが透けるようにしたかったからです。
下図がその過程です。連載は現在も続いているので、
最新号の原稿をお見せします。太郎商店の巻、です。

太郎商店の巻 その1

これをスキャンして、背景の白を透明化し、黒いラインだけの
Photoshopデータを作り、それをPainterに持っていって着彩します。
Painterは気に入ったブラシがあり、自然な感じを損なわずに着彩ができるし、
ちょっとしたペンのラインの修正は、うまく模倣できます。

太郎商店の巻 その2 

完成したものを、今度はPhotoshopで入稿データに仕上げます。
Painterの段階ではRGBで作業をして、CMYK化は
わたしはPhotoshopで行っています。
展示のときは、RGBのほうがプリントアウトしたときにはキレイなので、
RGBとCMYKの情報を二重で持っています。

太郎商店の巻 その3

全てをペンタブレットで描くのは、わたしにはちょっと難しいです。
やはり微妙なニュアンスとか、テキトウさは
紙に描いたペンの線に適うものはないと感じています。

展示の場合は、実際に足を運んでご来場いただく方の目や
時には触覚、時には嗅覚を楽しませることが大切だと思うので
手作りの部分をどう乗っけていくかが重要に思っています。
やっぱり展示は楽しくなければ!と思っております。

先日のカレンダー展の時は、手にしたときに触り心地のよい
カレンダーを…と思って、和紙に出力したものを展示しました。
あまり厚い紙ではめくりにくいだろうから、薄手のものを選びました。
あとは、紙の色も柔らかな白さのものを…と思ったら、
紙が薄くて透けてしまいました。あああ、詰めが甘い。