10月はたそがれの国

...というのはブラッドベリの短編集のタイトルで、収録されている短編も、その挿絵もすばらしい。「10月の季語だよね」と言った友人がいた。すばらしいと思う。ブラッドベリといえば、「たんぽぽのお酒」の続編がこないだ出たらしくて、びっくり。あのおじいさん、もう80代をゆうに超えて、なおも新作を、それも何十年も前に書いた作品の続きを書くとは。

こんなことって、長生きした作家だからこそなしえる業だと思う。若いときに傑作を生み出してしまうと、その後の作品への評価がほとんどなされない、ってことが多々あるけど、人は生きてこそ。積み上げてきた人生経験。その過程での出会い、決別、理不尽な思い、人の親切に触れたこと、その他いろいろなことが積みあがって、生まれる。文章であれ、音楽であれ、絵であれ、そういう過程を経たものは深い。わたしは、その深いものに触れることが好きだ。

どんな人も生きてこそだ。たとえ、具体的に生みだすものがなくっても、人と関わる事で、その人に何かを与える。だから、うんといいものにしようと心がけよう。晩年のヴォネガットは、あっちこっちのインタビューでそんなことを言ってたっけ。長編、読みたかったよ。などなど、つらつらと考えている。