[個展準備] ディレイニー

無謀だと思った。「アインシュタイン交点」を絵にすることは。第一、曖昧模糊としていて理解できなかった。なのに、目まぐるしい色彩と造形の洪水が、行間から押し寄せてきたから、仕方がないじゃないか。その第一印象を絵に描いておくことは悪いことじゃない。いいかもしれない、と決意した(って大げさな)。

まずは、もともとのタイトル「A Fabulous, Formless Darkness(摩訶不思議な混沌とした暗闇)」という言葉に惹かれた。そして、冒頭のフィネガンズ・ウェイク、これにもう打ちのめされた。「あたりが暗くなる、(色が衰え/沈々と静まり)......」これだけが動機だ。ということで、「スローターハウス5」と「グラックの卵」の次に描いたのは「アインシュタイン交点」でした。

ところが、描き上がって気がついた。訳者あとがきで、伊藤さんが「前回読んだ印象では、音楽を奏でる剣やら、ドラゴンやら、食肉花やら、SFというより安っぽいヒロイック・ファンタジィと見まがうような物語。ところがその背後に、これほどたくさんの意味と緊密なロジックが潜んでいたとは...」云々と書くくだりがあった。......音楽を奏でる剣やら、ドラゴンやら、食肉花やらって、や......やばい、そのまんまだよおいら!

ということで、個展までひと月半ありますが、先に謝っておきます。読み込んでから、また描いてみます。「スローターハウス5」のように。何年もかかって完成するのかもしれない。第一歩の「アインシュタイン交点」、個展会場でお披露目いたします。