[個展準備]ドレイクの方程式に新しい光を
イアン・R・マクラウドという作家の作品を初めて読んだ。「夏の涯ての島」という短編集で、表題作も含め、あらゆる形式に則った愛の形が描かれている。その中でとりわけ、わたしの気持ちを強く掴んだのが、「ドレイクの方程式に新しい光を」だった。
テアという女性と、トム・ケリーという男性。テアは生きるために目的を求め、トムは目的のために生きる。やがて価値観の相違から疎遠になってゆく二人が、長い長い年月を経て再会する。そして、テアがラストで取った選択を読んだ途端、はっとした。これはビョークの「ハイパー・バラッド」じゃないか、と。もしもこの歌を知っている人がいたら、是非読んでほしいと思うし、この曲を知らないでこの物語を読んだ人には、「ハイパー・バラッド」を聴いてほしいと思った。イラストにも、その色合いが反映されている。ちょっぴりここにも音楽山房が盛り込まれてしまったようだ。(むふふ)
トムの生きる目的とは、地球外生命体をSETIを使って探し続けることだ。舞台となっている時代では、もうSETIそのものは見捨てられた技術になっており、彼は半ば世捨て人のように生きるが、最後にテアと再会した後、トムは再びその目的に誇りを抱く。
痩せても枯れても、自分はトム・ケリーだ。
そして、今夜こそがその夜かもしれない。
まだ自分は耳をすまし、待っている。
生きるために目的を見出すのも人生。目的のために生きるのもこれまた人生だ。人の生きる道は、それぞれに誇り高く、そして美しい。そう思わせる作品だった。