[個展準備]メイル兄弟

残るは音楽山房の2点なのだが、連日、早朝4時半に起きて、スパークスのライブ生中継を観ている。

わたしが初めてスパークスを聴いたのは、実は一昨年前。かなり浅い。名前だけは知っていたが、なぜかノーチェックだった。そんな折、岸野雄一さんのサイトで「スパークス来日」の文字が躍っていた。この公演を見ないと一生損すると煽られたような煽られてないような。好奇心のほうが強く、チケットを予約し、予習のつもりで「Hello Young Lovers」を聴いた。最初聴いたときは、正直ぴんとこなかった。なんだこれ。聴いたことのない音楽だ。オーケストラとロック、怒涛のコーラスワークと、うーん、なんていったらいいんだ、これ。「......?」のまま、もう一度リピートした。リピートするたび、「?」は「!?」になり、「!!」になった。なんだこれは!すごい、すごすぎる!! どんどんはまっていった。

そして来日公演。開演が押したため、スパークスの登場も押した。内心、前座がつらかった。前座の人が悪いわけではないが、やはり主役が出るまでが長すぎたのだ。ところが、スパークスが登場するや否や、そのつらさは吹き飛んだ。まるで見たことのないステージ。アルバム一枚がそのまま一本の映画のようだ。スクリーンに映し出された映像に合わせ、ロンが不思議な踊りをする。ラッセルは右へ左へとステージを駆け巡ってエネルギッシュに歌う。呆然とした。

このステージ以来、実を言うとわたしはライブとかコンサートに、以前ほどあまりいきたいと思わなくなった。あのスパークスのステージの印象が、未だに強く残っているからだ。

ところで、私自身、スパークス歴が浅いおかげで、ラッセルといえば今の風貌だが、昔からのファンの方の間では、70年代の見目麗しい頃のラッセルの印象が強いようだ。しかし、わたしはどちらかというと、今のラッセルのほうが好きだ。年齢を重ねた人の顔というのは、実にいい。特に、ステージで見たラッセルの表情は、すばらしいと思った。そして、今年の21夜の怒涛のライブで見せるラッセルは、一昨年よりも心なしかすこし痩せていたし、近年で一番いい感じだと思った。

動かないロンと激しく動くラッセル。メイル兄弟のコントラストは、荒れた画質で、ときどき止まるインターネット中継を通じても、ぐいぐいと鮮やかに迫ってくる。絵に起こす際、二人の顔を描こうとは思っていたが、ここまでいろんなものを排した絵になるとは正直思わなかった。地味かなと思ったが、何よりも「今」のラッセルを描きたいと思った。「スパークス・ガイドブック」には、あまり近年のラッセルの写真がないし、CDのインナーもロンの写真が多い。スパークスのオフィシャルサイトの写真も、ラッセルは少し自信なさげに見える。ライブではあんなに意気揚々とすばらしい表情を見せているのに......。結局、作画の際に頼りにしたのは、自分で撮った、画質の悪いライブ中継のキャプチャーだった。

今のラッセルを、わたしは猛烈に応援している。モチロン、ロン兄ちゃんもかっこいくてステキだ。スパークス、また来日してほしい。そして、アルバム丸ごと1枚をドラマチックに見せるあのすばらしいステージを再現してほしいと思う。(フジロックにくるけどね)