B紙の謎
わたしが住んでいた、愛知県三河方面では、自由研究発表などに使う、やたらめったら大きな白い紙のことを「B紙」と呼んでいた。読み方は「びーし」。どういう由来なのかは知らなかったけど、とにかくアレのことはB紙と言う。
ところが、地元を離れ、この紙のことをB紙と言っても誰も理解しない。「模造紙じゃないの?」といわれるが、模造紙とはもっと安っぽい紙のことを言うんじゃないのか?となんだかしっくりしなかったが、とにかくB紙は方言だった。初めて気がついたのは大人になってからで、以来B紙は封印した。だって通じないもん。基本的に、三河の言葉はイントネーションが標準語に非常に近いので、あまり通じない言葉で苦労することはないが、B紙は盲点であった。ちっ。
そんなこんなで長い年月が経って、三河弁も標準語も相当怪しい言葉を日々繰り出している最近になって、某氏のmixi日記で、長岡の方言に模造紙を「大洋紙」と呼ぶらしい、といった内容のエントリーがアップされ、コメントに愛知県出身の人から「それはB紙です」、と自信たっぷりなお言葉が。
気になったのでWikipediaで調べてみると、模造紙は一般的、しかし名古屋など東海地方ではB紙、新潟県では大洋紙、富山県ではガンピ、九州方面では広用紙(ひろようし)、鹿児島県では広幅用紙(ひろはばようし)、愛媛県・香川県では、地域によって鳥の子用紙と模造紙とが混在している、とのこと。なんとまぁ名前がどうしてこんなに違ってしまったのだろうか。ちなみに、B全の紙だからB紙。それは知らなかった。そうだったのか。
方言と言えば、高校生の時に「はむ」という方言がわからなかったのが、わたし一人だった。三河弁で、おなかを抱え体を折り曲げてかがむ状態のことを「はむ」というらしい。が、初耳だった。これは、両親がきっと知らない言葉に違いないと思い、帰宅して「この状態ってなんて言う?」と、母の前でおなかを抱えてかがんで見せた。
母は言った。「はむでしょ?」
何故わたしだけ知らなかったのだろうか。方言の謎は深まるばかりである。