●アイランド博士の死
ジーン・ウルフの「デス博士の島その他の物語」から「アイランド博士の死」を描く。
「death」と「doctor」と「island」の3つの単語から成り立つ、言葉遊びのようなタイトルの不思議な短編たち。
「アイランド博士の死」の中に、島と海と宇宙が交錯する描写があり、それがとてもとても美しいと思った。
ウルフの世界観にどこまで近づけたかはわからないが、今回はこれをモチーフとした。
ミステリーとしても読め、解釈が幾通りも思いつき、
ファンの間でも議論が活発だったのは「アメリカの七夜」だったけど、
イメージとしては、やっぱ「デス博士」シリーズがいいと思った。
また、線画と従来のカラー画との技法を組み合わせる、個人的に小さな冒険をした作品でもある。
今回の展示では、「テーマの具現化」はもちろんのことながら、「表現技法に対する試み」も常とした。
トータルで世界観が形作れるかどうかが最重要なので、
双方のバランスが取れないと失敗してしまう。
「表現」ってほんとエネルギーが要るなぁーと、つくづく思う。小説愛ゆえなせる業。
小さな冒険は、まだまだ続く。
●そして赤い薔薇一輪を忘れずに
アヴラム・デイヴィッドスン。
これまた何と表現したらいいか、一言では表しにくい作家である。
洗練されていて、エキゾチックな香りもして、都会的でもあり、
センチメンタルでいながら、ミステリアス。
といってもシオドア・スタージョンとは全然違う。
絵を起こすに当たり
「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」が
イマジネーションを強くかきたてた。
個人的には“成長一筋”の「ナイルの水源」が大好きで、
これを描く予定でいたのだが、再読してみて、この小品にやられてしまった!
技法的な話をすると、いつものPainterによるデジタル作画と、
アナログのペンによる線画をミックスしたもの。
店主の突拍子もない「商品の値段」を表現するのにピッタリはまったように思う。
この書店に立ち寄ったチャーリーと同様、
そんなものが買えるような持ち合わせなど端からありはしないが、
もしもこんな書店があったら訪れてみたいものだ。客としての礼節をもって。