クロイドン発12時30分
ユーナと結婚する!そう考えるだけで陶然となった。
そのためならこの世のどんなことを犠牲にしてもいいのではないか。
、、、、、
どんなことでも---たとえそれが...。
(F・W・クロフツ:著/加賀山卓朗:訳「クロイドン発12時30分」より)
Manyo 2006年12月号「文学山房」掲載。バックナンバーはコチラ
不況に喘ぐ工場の経営を建て直し、愛する女性との関係を成就させるには、おじの遺産を手に入れるしかない...。切羽詰ったチャールズには、従業員の身を案ずる経営者としての顔と、片思いの相手との結婚を渇望する冴えない男としての顔とがありました。利己的で見栄っ張り。そう、チャールズはごくごく普通の男です。
だからこそ、この物語は、読む人の心を捉えて離しません。もっと器用に振舞えたら...もっと才能があったら、きっとチャールズは恐ろしい犯罪に手を染めることはなかったでしょう。殺人は許されることではありません。しかし、チャールズの置かれた境遇は、どこか他人事ではないような気がします。
なんちゃってカバーです。下図は、発売している新装版。
クロイドン発12時30分
F.W. クロフツ Freeman Wills Crofts 加賀山 卓朗