夏への扉

私的セレクションの三大タイムトラベル作品の一つ目は、タイムトラベル小説の金字塔といわれるハインラインの「夏への扉」である。

「心には冬景色　輝く夏を捕まえよう　だから　リッキー・ティッキー・タビー　その日まで　おやすみ」
......というのは、吉田美奈子作詞による、山下達郎の曲「夏への扉」。わたしは恥ずかしながら、今年になるまでこの名著を読んでいなかった。曲は知っていたのに。この歌の意味とはそういうことだったのか！と理解した。すばらしい意訳だと思った。

ところで、この物語が書かれたのが1957年、舞台になっているのは1970年。57年当時、70年というのは相当の未来に映ったのだろうが、さらに時を超えること2000年。もう果てしない未来だと思われていたに違いない！　ああ、そうなのに、もうすでに今は2008年。ハイヤード・ガールも、フレキシブル・フランクもいない。それにしても、この瑞々しさときたら！　若々しさにあふれていた訳もとてもよかった。青春と恋と仕事と、そして猫。そう、猫なのだ、ピート！！

「夏への扉」の作画にあたり、中西信行さんの描くあの表紙イラストがあまりにも有名なので、ここではガラリと趣向を変えたものにしようと試みた。この小説の魅力のひとつは、なんといってもリッキイの愛らしさではないだろうか。ということで、彼女にスポットを当て、もしもティーンネイジャーの人たちが読むならこんな表紙はどうだろうと想定し、 ポップなイラストに仕立ててみた。これはカワイイ。ピートもいる。ヌーディストの人もいるけど。