犬は勘定に入れません
コニー・ウィリスの小説より。
私的セレクションの三大タイムトラベル作品の三つ目は、コニー・ウィリスの「犬は勘定に入れません」。
ジェローム・ K・ジェロームの「ボートの三人男」にオマージュを捧げた本作品、とにかく楽しい。タイムトラベル・カラフル・ミステリ・ラブコメディである。
イラストに起こす際には、主人公のネッドではなく、2058年と1888年を行ったり来たりと大忙しのヴェリティにスポットを当てたいと思っていた。彼女の大活躍があってこそ、この物語があるといえる。そして、忘れてはならないのは、あてにならない名犬?シリルもさることながら、やはりここは、猫のプリンセス・アージュマンドであろう。だって、彼女を勘定に入れずして、この物語は成り立たないのだから。
そして、ご本人の登場シーンそのもの以上に、ネッドやヴェリティその他のみなさんが恐れおののく、レイディ・シュラプネルを忘れるわけにはいかない。それにしても、なんとまぁこの小説に登場する女性たちは皆、たくましいのだろう。
作画する上では、厳密な時代考証は特に行わず、文中の表現から推測するにとどめた。たとえばヴェリティが着ているドレスにこんな模様は入っていなかったと思う。デフォルメということでご勘弁いただきたい。なお、わたしが別途調べたのは、コヴェントリー大聖堂の現在の写真と、空襲で焼け落ちる前の細密画である。かつての礼拝堂は現在庭園になっており、なかなか感慨深い。そして、ムーンフェイズは19世紀すでに作られていたのでよしとした。そんなところだろうか。コメディとしての楽しさを第一に表現したかった。連続TVドラマになってほしいなぁ。思い出すだけで笑いがこみ上げる楽しい小説。