一角獣・多角獣


一角獣・多角獣 シオドア・スタージョンの短編集より。

思った以上に手こずった一枚。代表作で長編の「人間以上」も読んだが、スタージョンはやはり短編がいいなぁと、短編集「一角獣・多角獣」をセレクトする。しかし、その中の一篇をチョイスしてしまうと、ファンタジーに寄り過ぎたり、ホラーに寄り過ぎたりする。一貫したスタイルがある短編集であるにも関わらず、こういうことが起きる。今回の展示作品の中では、スタージョンが一番大変だった。

シオドア・スタージョン。孤独で、残酷で、しかしながら優しさもある。都会的であり、オーガニックな手触りもある。ミステリの要素もありつつ、SFの要素もふんだんにある。毎晩毎晩スタージョンのことを考えてはラフを描き続け、そのラフは50枚以上にのぼった。が、夜明けはいつかやってくる。ようやく決着をつけた。題材は「めぐりあい」。非現実と現実の混在具合といい、ダンディな雰囲気もスタージョンらしいと思うし、なによりも「シジジイ」だし。

「シジジイ」とはスタージョンの説明によると、「単為生殖とかその他ある種の下等なタイプの生殖作用に付随して起こる現象の一種」のこと。スタージョンは、このシジジイがとてもお気に入りで、「めぐりあい」の他にも、「反対側のセックス」にも出てくる。また、スタージョンはおそらく音楽がとても好きだったのではないかと思う。「めぐりあい」の主人公は、作曲家でもあるし、「死ね、名演奏家、死ね」では、スタージョンの音楽趣味がどっさり盛り込まれているし。

ということで、それらの要素を盛り込んだ絵にしてみた。ついでながら、「熊人形」も混ぜ込んでみた。この絵、タテ位置で描いているのに、描いている本人が横位置のように見える錯覚に陥る。ラフでとても苦労した分、作画は早かったが、それにしても、変な絵になった。イメージと違うよ、とファンの方からは怒られるかもしれない。しかし、これもやはりひとつのスタージョンなのだろう。

スタージョン本人も言っている、「常に絶対的にそうであるものは、存在しない」と。(スタージョンの法則